(社説)辺野古不承認 国の強権が招いた混迷

[PR]

 政府は、自らの不誠実な姿勢と強権的な振る舞いが、この事態を招いたと猛省すべきだ。

 米軍普天間飛行場辺野古への移設計画をめぐり、政府が申請していた設計変更を玉城デニー沖縄県知事は不承認とした。埋め立て予定海域に広がる「マヨネーズ並み」とも言われる軟弱地盤を改良するための変更とされたが、約1年半に及ぶ審査を経て、知事は海底調査や環境保全策が不十分と結論づけた。

 そもそも政府の対応は理解し難いものだった。

 軟弱地盤の存在を早期に把握しながら公にせず、18年12月に埋め立て土砂を海に投入する工事を始めた後に、ようやく事実を認めた。県民のみならず国民全体を愚弄(ぐろう)する行いだ。

 今回の申請について、知事が「不確実な要素を抱えたまま見切り発車したことに起因する」と述べ、政府を改めて厳しく批判したのは当然である。

 隠蔽(いんぺい)だけではない。

 予定海域の東端の護岸建設場所には、海面下90メートルまで軟らかい粘土層が続くことを示すデータがある。ところが政府は、そこから数百メートル離れた海底の調査をもとに、70メートルの深さまで改良工事を行えば足りると主張している。知事はこれについても、「最も重要な地点で必要な調査がなされず、地盤の安定性や災害防止の検討が十分でない」と指摘した。

 調査のずさんさは国会でも取りあげられたが、政府から納得のゆく説明はついにされなかった。いずれにせよ難工事は必至で、米国のシンクタンクは「完成の可能性は低い」とし、議会からも懸念の声があがる。

 ほかにも、付近に生息するジュゴンやサンゴへの影響、完工後に想定される地盤沈下、予定を大幅に上回る1兆円近い経費など、新基地建設に関する疑念は枚挙にいとまがない。にもかかわらず「辺野古が唯一の解決策」を繰り返し、県民投票などで示された民意を無視して突き進む政府は、思考停止に陥っていると言わざるを得ない。

 辺野古にこだわり続けるかぎり、原点である「普天間の危険除去」は放置されたままだ。先日も所属するオスプレイが金属製の水筒を住宅地に落下させる事故を起こした。政府の試算でも辺野古の工事完了に12年はかかる。それまで住民は、墜落の危険やくらしを脅かす騒音を甘受せよというのか。

 今回の知事の判断に政府は対抗措置をとる構えだが、そんなことをすれば、安倍・菅政権時代に刻まれた県との溝はさらに深まる。首相が交代したいまこそ、「原点」に立ち返り、米国および県とともに、実効ある負担軽減策を探るべきだ。

連載社説

この連載の一覧を見る