(社説)臨時国会開幕 丁寧な説明 質疑でこそ
衆院選で国民の信任を得た岸田首相が、初めて本格的な論戦に臨む臨時国会が召集された。安倍・菅両政権下で傷つけられた「言論の府」を立て直す出発点にしなければならない。首相が掲げる「丁寧で寛容な政治」の内実が問われる。
首相はきのうの所信表明演説で、まず新型コロナ対策を取り上げた。3回目のワクチン接種を「できる限り前倒し」するとし、オミクロン株に対応した外国人の入国停止に対する批判は「私が全て負う覚悟」と述べた。ただ、国際線の新規予約停止をめぐる朝令暮改には触れなかった。国土交通省の事務方の判断とはいえ、混乱を招いた経緯は、首相自身の口から詳しく説明する責任がある。
看板政策の「新しい資本主義」の実像もまだ見えてこない。成長戦略として、技術革新やデジタル化の推進、分配政策として、給与を引き上げた企業への税制支援の抜本的な強化などを列挙したが、従来の施策の延長線上のものが多い。世界を先導すると宣言したが、それに値する新しいモデルが示されたとは言いがたい。
2カ月前の就任後初の所信表明にはなかった「国民と共にある外交・安全保障」というスローガンも登場した。この分野に国民の理解や支持が欠かせないという認識はその通りだ。ならば、沖縄県民が繰り返しノーを突きつけた米軍普天間飛行場の辺野古移設を推進する立場も見直すのが筋である。
核兵器禁止条約については、今回も触れなかった。年明けに予定される核不拡散条約(NPT)再検討会議が成功するよう「積極的な役割」を果たすとしたが、核禁条約締結国会議へのオブザーバー参加こそ、「核なき世界」に向けて役割を果たす第一歩ではないのか。
首相は最後に憲法改正を取り上げ、国会議員に対し、国会での積極的な議論と国民的議論の喚起を呼びかけた。安倍元首相の改憲ありきの前のめりな姿勢が野党の不信と反発を招き、落ち着いた議論の環境を損ねたことを忘れてはならない。
6月に通常国会が閉会した後、コロナの感染急拡大にもかかわらず、菅政権は憲法に基づく野党の臨時国会召集要求に応じなかった。岸田政権に代わって初の臨時国会も、首相が解散総選挙を急いだため、予算委員会での論戦は行われなかった。
首相のきのうの演説は、安倍・菅両氏の過去の所信を上回る長さだった。しかし、単に言葉数が多ければ丁寧というわけではない。野党の厳しい質問もはぐらかさず、正面から答える。首相の言う「丁寧な説明」は、明日以降の質疑で試される。





























