森林は、未来育む地域の宝 「国民参加の森林づくりシンポジウム」大分で開催

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 「国民参加の森林(もり)づくりシンポジウム」(大分県国土緑化推進機構、朝日新聞社、森林文化協会主催)が5日、大分県の日田市で開かれた。パネル討論では、林業を教育やまちづくりに生かし、森林を次世代につなげていく地域の試みが紹介された。

 ■子どもとの「木育」通し町おこし パネル討論

 コーディネーターを務めた全国木造建設事業協会の大分協会長、馬場鉄心さんは「いま私たちの社会が豊かなのかと問われると首をかしげざるをえない。うまくいかないのは大事なことを忘れてしまっているからじゃないか」と問いかけることから始めた。

 そして、身近にある森林こそが地域の宝だとしたうえで「資源、命と暮らしを育む森を活用して次世代に渡すことで、社会が豊かになるのではないか」と解説し、森林にかかわる各地の活動事例を紹介した。

 人口約2400人の福井県池田町は、面積の9割が森林だ。第三セクター「まちUPいけだ」の山田高裕専務取締役は、幼いころから木を身近に使い豊かな心を育む「木育」を通じた町おこし活動にとりくむ。

 木育施設を作り、子どもが楽しめるクラフト体験を提供することなどで、多くの観光客や修学旅行生が訪れるようになったという。山田さんは「森の木を生かして地域をつくろうと進めている」と話した。

 日田市の折居公美乃さんは2019年4月に開園した認可外保育施設「森のようちえん おひさまのはら」を運営する。「森のようちえん」は、幼い頃からの自然との触れ合いで感性を磨くことなどが目的の活動で、各地に広がる。

 施設の子どもが周りの里山で遊び、高齢化が進む山あいの地域を訪れることで、地域が明るくなるきっかけづくりもできるとして、「森林に木材供給だけではない新たな価値が生まれると思う」と話した。

 日田市観光協会の黒木陽介事務局長は、市内に多いスギの品種にちなんで命名された団体「ヤブクグリ」の活動を紹介。木材でいかだを作ったことをきっかけに、林業と観光の活性化に取り組んでいる。黒木さんは「遊んでいるだけだが、山とまち、人をつなげる活動をしてきた」と話した。

 ■希望やつながり、デザインの力で 武蔵野美術大学教授・若杉浩一さん 基調講演

 武蔵野美術大学造形構想学部教授の若杉浩一さんは「『創造』の源である森林、未来の拠点である『地域』」と題した基調講演で、スギの活用を訴える団体「日本全国スギダラケ倶楽部(くらぶ)」や、木を生かしたデザインに基づく各地のまちづくり活動を紹介した。

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 僕は企業のデザインをしてきた。若い頃、あこがれのデザイン賞をとり雑誌にも載った。だが、ふるさとを見るとシャッター商店街。仕事するほど地域の経済を奪う片棒をかついでいないかと思ってしまった。

 デザインで地域のために何かできないか、と2004年に「日本全国スギダラケ倶楽部」を起こした。

 事例をひとつ。宮崎県日南市で、子育て支援センターを作った。地元の木を使ってデザインするだけでいいのか、子育て支援する社会を作ることが大事じゃないか、と考えた。

 たくさんのワークショップをやって高校生、市民を巻き込んでデザインを手伝ってもらい、学び合い助け合いながらセンターができあがった。目的は経済じゃないが、魅力があるなら全国どこからでも人が来る。

 近代社会は地域間格差や環境破壊を生んできた。希望やつながりを戻さなくてはいけない。SDGs(国連の持続可能な開発目標)はそこを取り戻すためのものではないのか。これからは自然、未来、ともに育む共同体としての意識が重要になる。未来は確実に自分たちの手の中にある。それを木が教えてくれた。