(社説)コロナと米軍 鈍い対応、深まる不安

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 各地で新型コロナの感染者が急増している。とりわけ米軍基地を抱える地域が深刻な状況にあり、沖縄、山口、広島の3県にまん延防止等重点措置が適用されることになった。

 日米両政府は危機感を共有し、これ以上の拡大の防止に全力を挙げるとともに、突きつけられた日米地位協定に起因する水際対策の「穴」を、確実に封じなければならない。

 沖縄県のきのうの新規感染者は981人(米軍を除く)と、過去最多を記録した。

 県は、米軍基地からの「染み出し」が今回の流行の要因とみている。国立感染症研究所との調査で、市中感染の疑いがある複数の人から、基地従業員らと同じオミクロン株のゲノム系統が確認されたためだ。

 基地が市民の健康・安全を脅かす事態になっているというのに、政府の対応は遅く、かつ生ぬるいと言わざるを得ない。

 米軍基地での大規模クラスターの発生と、基地で働く日本人従業員のオミクロン株への感染を、県が発表したのは先月17日だ。その後、兵士らは米国を出発する前や日本到着直後の検査を行わず、定められた行動制限期間中も基地内を自由に移動していたことが明らかになった。

 日米地位協定により、米軍には検疫を含め国内法が適用されない。だからこそコロナ禍を受けて、日米両政府は20年7月、在日米軍が日本の水際対策と「整合的」な措置をとることで合意したのではなかったか。しかし絵に描いた餅で、日本政府は実態を把握することすらしていなかった。沖縄に限らず、米軍基地のある自治体や住民が不信を抱くのは当然だ。

 きのう林芳正外相はブリンケン米国務長官と電話で協議し、米軍関係者の外出制限を含む対策の強化を要請した。先月21日に沖縄県の玉城デニー知事が求めていたことだ。半月遅れの代償は大きく、重い。

 ともに重点措置が適用される山口、広島の県境には米軍岩国基地がある。最近の山口県の感染者の約6割を占める岩国市も「基地内のオミクロン株が市中に漏れた可能性が高い」とみており、構図は沖縄と一緒だ。

 日米安保の根幹をなす日米地位協定が絡んでの感染拡大である。岸田首相はきょうの国会に出席して、この事態に至った経緯と理由、反省点があればその内容、今後講じる措置を、自らの言葉で説明し、記者会見にも臨むべきだ。

 重点措置の場合、菅前首相は担当大臣に説明をゆだねてきたが、誤った前例を踏襲する必要はない。政府の最高責任者として、市民の不安と疑問に正面から向き合うよう求める。