(社説)衆院10増10減 法律通りに格差是正を

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 自分たちで決めたルールなのに、適用が迫るや、ちゃぶ台返しをするようなことは許されない。法律通りの実行を求める。

 一票の格差を是正するため、2020年の国勢調査をもとに、政府の衆院議員選挙区画定審議会が議論を始めた小選挙区の区割り変更に、自民党内から異論が絶えない。

 東京都で5増、神奈川県で2増、埼玉・千葉・愛知各県で1増の一方、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎各県で1減となる「10増10減」案である。

 16年の法改正で導入された、都道府県ごとの定数を人口に応じて増減させる「アダムズ方式」が初めて適用される。審議会が6月までに新たな区割り案を首相に勧告する。

 これに対し、和歌山県選出の二階俊博元幹事長が今週、地元のラジオ番組で「腹立たしい。政府の方針は間違いがあるのではないか。地方には迷惑な話だ」と語った。しかし、20年の国勢調査からアダムズ方式を採用するという法改正は、自民党が公明党と議員提案したものだ。それを棚に上げて、政府を批判するのは筋違いだ。

 昨年末の自民党選挙制度調査会でも「地方の声が国政に届きにくくなる」などと批判が噴出。同党出身の細田博之衆院議長は、東京都で3増、新潟・愛媛・長崎各県で1減とする「3増3減」案を独自に提唱し、「頭で計算した数式によって、地方を減らして都会を増やすだけが能じゃない」と発言した。

 中立的な立場の議長の、法律を無視するような言動は信じがたい。ましてや、細田氏は議員立法の提出者だった。各党に賛同を求めたことをお忘れか。

 定数が減る地方は自民の勢力が強い。安倍元首相や林芳正外相、岸信夫防衛相の山口や二階氏の和歌山など、実力者のいる県では候補者調整の難航も予想される。地方軽視への批判という形をとりつつ、党利党略や議員の自己都合が透けて見える。

 09、12、14年の衆院選を「違憲状態」と断じた最高裁が、最大格差1・98倍の17年衆院選を合憲と判断したのは、アダムズ方式導入を決めた関連法の成立を評価してのことだ。それが実行されないのなら、司法への裏切りにもなろう。

 投票価値の平等は、憲法が求める大原則である。地方の声が反映されにくくなるとの指摘については、衆参両院の役割分担も視野に入れた選挙制度改革を含め、別途議論する必要がある。格差是正のうえで、アダムズ方式も万全ではないが、国会自らが決めた仕組みによる「10増10減」すら実現できないようでは、政治不信を招くだけだ。