(社説)財政目標堅持 口先だけで済ませるな

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 岸田政権はきのう、国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する財政再建目標を堅持することを決めた。25年度には団塊世代全員が75歳に達し、医療費などの公費負担が一段と膨らむ。その節目までに、借金依存の財政運営から脱却する目標の意義は大きく、政府の判断は妥当と言えよう。

 目標の達成はコロナ禍で絶望視されていたが、一転して可能性が出てきた。飲食・旅行業界などは打撃を受けているものの、輸出企業を中心に大企業の業績や株価は堅調で、想定と異なり、20年度の税収はむしろ伸びたからだ。

 内閣府が公表した新たな試算によると、今年度の基礎的財政収支の赤字は42・7兆円。25年度も1・7兆円の赤字が残るが、これまでと同様の歳出削減努力を続ければ、2・2兆円の黒字にできるという。

 自民党内には、コロナ禍を理由に目標を凍結し、大胆な歳出拡大を求める声もある。確かに感染動向次第では、目標の柔軟な変更を念頭に置いておくことも必要だろう。

 だが、期限までまだ4年あるいま、早々に断念するのでは、将来世代への責任を放棄したも同然である。

 ただし目標達成は容易ではない。政府試算は、22~25年度の平均で2・5%の実質経済成長を見込む。過去10年間で1年しか実現できていない高成長だ。感染が収束すれば一定の景気回復を期待できるとはいえ、楽観的に過ぎるのではないか。

 試算は補正予算が編成されないことも前提にしている。目標達成は、コロナ禍のもとで未曽有の規模に膨れあがった補正の圧縮が条件となる。

 過去最大の35・9兆円にのぼる今年度補正には、コロナ対策以外にも、防衛主要装備品の購入費や公共事業、脱炭素社会に向けた投資などが10兆円近く盛り込まれた。これら多くの事業は毎年補正に計上され、各省庁の既得権益となっている。

 財政難のなかでも、少子化対策介護職員・保育士の賃金改善に手をこまぬいているわけにはいかない。どうしても必要な政策を実施するためには、他の予算の削減や増税で財源を確保する取り組みを徹底することが求められる。

 歴代の政権は、財政再建の期限が迫る度に達成の時期を先送りしてきた。目標堅持を口先だけで終わらせてはならない。

 夏の参院選に向けて、これから与野党の歳出圧力が高まることが予想される。国民の命と暮らしを守るのは政府の責務だが、予算をばらまく余裕などない。このことを、政府は心するべきだ。