(社説)カザフスタン 権威主義が招いた混迷

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 かつてソ連の一部だった中央アジアで、カザフスタンは豊かな国として知られる。石油などの資源に恵まれ、1人あたりの国内総生産もロシアに近い。

 その国がいま、政情不安に揺れている。

 反政権デモが吹き荒れ、30年以上にわたり権威を保ってきたナザルバエフ前大統領(81)が消息を絶った。失脚した可能性が高まっている。

 ソ連当時のカザフ共和国のトップを務め、ソ連共産党の最高幹部にも名を連ねた政治家だ。国の初代大統領となり、巧みな統治をみせた。

 資源の開発で積極的に欧米の資本を導入しつつ、ロシアや中国と良好な関係を保った。国内の教育にも力を入れ、独裁的ではあるが手堅い国家運営が内外から評価されてきた。

 2019年に大統領の座から退いた後も、事実上の最高権力者として院政を敷いていた。

 しかし、年明けに全土に広がったデモは、前大統領の完全な退場を求めている。きっかけは燃料の値上げとされるが、背景には権力集中の弊害に対し蓄積された国民の怒りがある。

 前大統領の3人の娘はいずれも有力政治家や大富豪だ。極端な縁故主義に加え、官僚らには汚職体質もはびこる。近年は、首都が前大統領のファーストネームに改称された。

 かつては東南アジアで開発独裁と呼ばれた体制が崩壊し、新たな政治の模索へ移行した。旧ソ連構成国の優等生とされてきたカザフスタンも激変の道をたどるのか、注視が必要だ。

 トカエフ現大統領(68)は前大統領の忠臣として知られていたが、混乱を機に全権掌握に乗り出したようだ。前大統領を安全保障会議の議長職から解任し、治安機関を率いる前大統領の側近を拘束した。

 一連の経緯は、いかに統治能力の優れた指導者でも、個人の権威に頼りきった体制が長引けば持続できないことを物語る。腐敗やゆがみが結局は国の安定を危うくする。この教訓は、ロシアを含む超長期政権の指導者らが学ぶべきだろう。

 カザフスタンで不透明な院政が終わるならば民主化の進展といえるかもしれないが、デモを強権的に鎮圧したトカエフ氏の責任も重い。

 いったんは164人の死者が出たと発表したが、のちに撤回された。犠牲の詳細と責任を明らかにすることが、大統領としての正統性を示す第一歩だ。

 トカエフ氏はデモを一方的にテロだと主張し、ロシアなどに要請して多国籍部隊を展開させた。外国軍の武力を借りて反政権派を抑え込むような手法は、民主国家として許されない。