(社説)物価の動き 賃上げで経済支えよ

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 石油などの値上がりによる世界的なインフレ傾向が、日本にも徐々に及んでいる。家計への悪影響を防いで消費を支えるには、順調に利益を上げている多くの企業がしっかりと賃上げしなければならない。

 日本銀行は今週まとめた「経済・物価情勢の展望」で、22年度の物価見通しを若干引き上げた。エネルギー価格の上昇に加え、需要不足が和らぐ中で企業が原材料の値上がり分を製品価格に上乗せする動きも緩やかに進むとの見方からだ。

 日銀は物価上昇率2%を目標に大規模な金融緩和を続けている。ただ、目指すのは景気拡大が進み所得が増える中での安定した物価上昇であり、資源高や供給制約によるインフレは、そうした条件を満たしておらず持続性もないとの見解だ。上昇率自体も、22年度平均で1・1%前後にとどまるとの見方で、2%にはほど遠い。従って、政策面では現行の緩和策を続けるとの姿勢を強調している。

 確かに、欧米に比べれば日本の消費者物価上昇率は依然極めて低い。とはいえ、企業の間で売買される物品の値段(企業物価)は12月に前年より8・5%(速報値)上がった。

 問題は、物価上昇幅が日銀の見通しを大きく超え、しかも相当程度続きそうな場合だ。米国でも昨秋まで当局が「一時的」と見ていた物価上昇の勢いが収まらず、政策対応の前倒しを余儀なくされた。国により状況は異なるが、注視が必要だ。政策の差で為替が大きく円安に振れれば、輸入品のインフレの影響が増幅される可能性もある。

 エネルギーや食料品など必需品の値上がりは、家計に重い負担となる。消費を減らさざるを得なくなれば内需の足を引っ張り、コロナ禍からの経済回復に水を差しかねない。

 家計部門全体では、この間の消費抑制や給付金で貯蓄を増やした余力があるとはいえ、やはり今後のカギを握るのは、春闘での着実な賃上げの実現だ。22年度の物価上昇率が1%程度だとしても、それに見合うベースアップに定期昇給分を含めた3%程度の賃上げは、所得目減りを防ぐための最低条件になる。

 原材料高などにもかかわらず企業の利益は全体では高水準を保っている。経団連は18日に公表した春闘方針で、好業績の企業はベアも含めて「新しい資本主義の起動にふさわしい賃金引き上げが望まれる」とした。昨年の「ベアも選択肢」よりは前向きだが、「個々の企業に適した対応を」とも述べている。個社の事情はあるとしても、それならばもうけている企業は大幅な賃上げこそが「適した対応」であるとの自覚を持つべきだ。