(社説)学校法人改革 拙速を避け徹底議論を

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 学校法人のガバナンス(統治)改革をめぐる議論が混迷している。私立大学で不祥事が相次いだのを受けて始まったものだが、意見の溝は深く、文部科学省がめざす3月中の取りまとめは不透明な状況だ。

 大学の自治や教育の自由、さらには学生一人ひとりの勉学や将来にも影響が及ぶ話である。多くの人が納得できる結論に向けて、期限にとらわれずに検討を尽くすべきだ。

 きっかけは、複数の医学部で発覚した不正入試や日本大学のアメフト事件だ。理事長らの逸脱や暴走を組織として止めることができなかった責任は重く、私大不信を招いた。見直しが必要なのは間違いない。

 政府の「骨太の方針」にガバナンス改革が盛り込まれ、文科省は20、21年に二つの有識者会議を設置。自民党行政改革推進本部の意向もあり、後者は私学関係者をほぼ抜いて構成され、報告書を先月公表した。

 内容は、現役の理事や教職員を排除した「評議員会」を最高の監督・議決機関とし、理事の選任・解任、事業計画、予算編成など、経営上の重要事項の決定権を与えるというものだ。先行した行革本部の提言に沿い、社会福祉法人などに導入された制度を基本的にあてはめた。

 これに私学側が猛反発した。

 学外者だけの評議員会では、現場の実態を踏まえずに教育内容を決めたり、短期間で成果が出やすい研究を優先したりする恐れがあると指摘すると、自民党文教族も同調した。

 今国会での法改正を予定していた文科省は、急きょ新たな会議体を設けて年明けに初会合を開いた。今度は委員13人のうち7人を私学団体代表が占め、前回とは逆の意味でバランスの悪いつくりになっている。同様に政治からの要請で動きだし、結局頓挫した大学入試改革を思い起こさせる混乱ぶりだ。

 「評議員会」構想に対する私学側の懸念はもっともで、修正が必要だ。一方で「不祥事は一部の話で、今のガバナンス体制に問題はない」と思っているとしたら、考え違いも甚だしい。理事長の専横などミニ日大というべき事象は散見され、人々の厳しい目が注がれている。

 税制上の優遇措置がとられ、国や自治体から多額の助成金が支出されていることを忘れず、「自分ごと」として今回の改革論議に臨んでもらいたい。

 現行法の下でも、たとえば理事の経歴や選任理由、理事会の議事録をホームページに公開するなど、経営の透明性を高めることはすぐにでもできる。本気で不祥事を根絶しようとしているか。各大学の社会に向き合う姿勢が問われている。

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