(社説)中国の人権 なぜ出国を認めぬのか

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 強大な国であっても、国民一人ひとりの基本的な人権が大事にされないようでは、世界から尊敬されることはない。

 中国で人権を守ろうとする活動家への締めつけが強まっている。最近、海外で闘病中の家族に会うため出国しようとしても阻まれ、拘束されるケースが続いている。

 犯罪者でもない市民の出国を認めないのは不当である。ましてや、重病にかかった家族の元に駆けつけたい親の行動を認めないのは尋常ではない。人権を軽んじる中国当局の行為は非道と言わざるをえない。

 唐吉田氏は北京在住で、人権派の元弁護士である。昨年4月、日本に留学している25歳の長女が突然の病に倒れた。唐氏は急きょ訪日しようとしたところ、空港で阻止された。

 国家の安全や利益に危害を与える可能性があるため出国を禁じると、当局は説明したという。とうてい納得できる理由ではない。

 病気の子どもを案じる親の行動によって脅かされる国家の安全とは何なのか。唐氏はテロ活動などとの関係もなく、日本政府はビザも出していた。

 当局が心配なのは結局、共産党政権の「安全」なのだろう。唐氏は当局による違法な「闇監獄」の問題を訴えてきたほか、キリスト教関係者らの弁護をしたことなどで何度も拘束されてきた。唐氏が出国し、日本でそうした政権の暗部を語るのを恐れたということらしい。

 唐氏はその後も何とか娘に会いたいと出国を求める訴えを続けたが、昨年12月、行方不明になった。当局によって拘束されている可能性が強い。長女はいまも意識不明の重体のまま日本の病院に入院している。

 著名な民主活動家、郭飛雄(本名・楊茂東)氏も昨年1月、米国在住の妻ががんであると分かり、渡米しようとしたが、足止めされた。

 郭氏はかつて、新聞の報道に対する当局の介入に抗議したことで懲役6年の判決を受けて、投獄されたことがある。昨年来、出国を求め続けたが、12月に拘束された。夫婦の再会はかなわず、妻は先日、米国で亡くなった。

 なぜ、そこまで市民の権利と自由を踏みにじるのか。暮らしを縛り、人々の言葉を奪おうとする。そんな理不尽な行為がこれ以上許されてはならない。

 来月には北京で冬季五輪が開幕する。開催国の中国政府は、人権の尊重を高く掲げた五輪憲章に真正面から向き合うべきだ。いかにきらびやかな祭典の演出をしようとも、その足もとにある深刻な人権侵害の闇を消すことはできない。