(社説)盛り土の規制 反省踏まえた法律に

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 静岡県熱海市で昨年7月に起きた土石流被害を受けて、政府は盛り土の安全対策を強化する法案を今国会に提出する。

 気象の激甚化などにより、ただでさえ災害のリスクが高まっている。人工物である盛り土の欠陥で犠牲者を出すようなことがあってはならない。早急な法整備が求められる。

 盛り土に関する包括的な法律はなく、これまでは自治体が条例を定めてその範囲内で対処してきた。このため取りうる措置や違反行為に対する制裁に限界があり、熱海の惨事につながったとの指摘もある。

 具体的には宅地造成等規制法などを改正し、▽宅地が近く、斜面が急な地域を知事が「規制区域」に指定して、一定規模以上の盛り土を許可制にする▽排水設備の設置や、行政による工事途中および完了時の検査を事業者に義務づける▽講ずべき安全対策について、自治体が勧告や命令を出せるようにする▽無許可造成の罰則を重くする――などを検討している。

 なにより大切なのは、自治体任せにせず、国が責任をもってこの問題にあたる姿勢を明確に打ち出すことだ。

 熱海の事故後につくられた内閣府の有識者検討会は昨年末、国土全体に及ぶ基本方針を国が定めることや、土地の利用区分を超えて「すき間」のない規制をすることなどを提言した。

 宅地、農地、森林など、用途ごとに法律も所管省庁も異なり、網をくぐり抜ける事例が絶えない現状を、根底から見直す必要がある。縦割り行政に甘んじ、悪質業者への対応も現場に委ねてきたことを国は反省し、今回の法改正の出発点としなければならない。

 全国知事会の都道府県アンケートでは、「業者が是正指導に従わない」「条例の罰則では抑止力が小さい」などの回答が多く寄せられた。知事会は、業者への住民説明会の開催義務づけや、自治体が代わって安全措置をとった場合の財政支援なども要望している。こうした声も念頭に制度を練り上げるのが、政府・国会の使命だ。

 すでにある盛り土への手当ても怠るわけにはいかない。

 昨年11月末までに点検できた約2万8千カ所のうち1375カ所で、届け出がない、あるいは災害防止措置が確認できないなどの不備が見つかった。まだ調べられていない箇所もある。岸田首相は施政方針演説で「安全確保を進める」と述べたが、それには技術者と財源の双方が要る。言葉だけにせず、約束をしっかり果たしてほしい。

 熱海事故の原因解明と適切な法体系、そして再発の防止。いずれも待ったなしの課題だ。

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