(社説)大企業の減資 税のゆがみ放置するな

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 大企業が資本金を減らして中小企業になる動きに歯止めがかからない。税で優遇を受けることが主な目的とみられる。

 東京商工リサーチによると、資本金を1億円以下に減らし、税務上の中小企業になったのが20年度、前年度比39・4%増の997社に膨らんだ。21年度は上半期だけで684社にのぼり増加が続いているという。

 今年に入り、液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)も減資を決めた。

 JDIは今年度の売上高2970億円を見込んでいる。しかも、官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)が投じた2083億円が未回収のままだ。しかし経済産業省は「投資先の経営判断は、INCJに委ねている」とし、是正を求めない方針だ。多額の公的資金に支えられる企業の「課税逃れ」を黙認するというのか。

 減資で大きな節税効果が生じるのは、都道府県が徴収する法人事業税外形標準課税だ。大企業は赤字でも人件費などに応じて納めなければならないが、中小になれば課税を免れることができる。

 コロナ禍に直面した大企業にとって、減資は経営難を乗り切る一助にはなろう。ただ、外形標準には、地域の行政サービスを活用している以上、赤字企業にも一定の対価を払ってもらう意義がある。経営難だからといって課税逃れのような動きを認めれば、外形標準の理念が空洞化してしまう。

 旅行業界では、最大手のJTBに続き、日本旅行も減資を決めた。このままでは競争上不利になるライバル企業も減資を選び、減資が減資を呼ぶ悪循環に陥りかねない。

 ところが政府与党の対応は鈍い。昨年末の税制改正ではほとんど議論されず、自民党税制改正大綱に「適用対象法人のあり方について、引き続き慎重に検討を行う」と書かれただけだ。

 外形標準はすべての企業を対象とするのが理想である。ただ、中小企業が価格交渉で弱い立場に立たされていることも、念頭に置く必要がある。まずは課税の線引きを、資本金ではなく、売上高や総資産など、より事業規模を適切にとらえる指標に改めるべきだ。

 課税逃れは、コロナ前から指摘されてきた問題である。外形標準の導入直後の05年度は2万8千社あった適用対象企業が、19年度には2万社に減った。

 課税逃れを目的に減資する企業は、社会的責任を問われるだろう。だが、最大の責任は、ゆがんだ税制を長年放置してきた政府与党にある。このことを自覚し、早急に是正に踏み切らなければならない。

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