(社説)中国の五輪外交 厚遇の陰で拭えぬ疑念

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 冬季五輪の開幕に合わせ、北京が活発な外交演出の舞台となっている。儀礼に訪れた首脳らへの厚遇ぶりが伝えられる。

 米英などが人権問題などに抗議して政府高官の派遣を見送るなか、中国は友好国との連携を誇示したかったようだ。

 平和の祭典であるべき五輪が、米中対立による世界の分断を示す場になったのは残念というほかない。五輪の理念をゆがめる危うい政治利用を憂慮する。

 中国が特に歓迎したのは、ロシアのプーチン大統領である。習近平(シーチンピン)国家主席との会談では、米国主導の北大西洋条約機構NATO)の拡大に反対する共同声明を発表した。

 世界はいま、ウクライナとの国境付近に集結したロシア軍の動きを心配している。その渦中に、中国はあえてロシアに寄り添う姿勢を強調した。

 中国は、国連決議に沿って、五輪・パラリンピック期間中の世界の紛争休戦を呼びかけていた。ならばプーチン氏に対し、無謀な軍事行動に走らぬよう求めるのが筋だ。対米牽制(けんせい)という共通の政治目的を優先したのだとすれば、危うい。

 習氏は、カザフスタンの大統領とも会談した。先月に騒乱が起き、多くの市民が死傷したばかりの国だ。ここでも習氏は、人道的な見地からの懸念を示すことなく、当時の政権の対応に支持を表明した。

 今回、要人が訪中した約25カ国は、2008年の北京五輪に比べ半分にも満たない。それだけに中国に敬意を示した国には相応に報いるということか。

 中国からすれば、分断を進めているのは米国の側に見えるのだろう。米国が昨年開いた「民主主義サミット」では、中国など一部の国々が排除された。

 ただ、そうだとしても、米欧の首脳だけでなく、多くの国際団体や市民活動家らが非難の声を上げている中国の人権問題は直視されるべきだ。

 開幕式では最終の聖火ランナーウイグル族の選手にしたが、そんな演出は、むしろ問題の根深さを感じさせた。新疆ウイグル自治区での少数民族に対する深刻な人権侵害について、疑念は何も晴れていない。

 五輪を前に、中国政府は国連の人権担当高官による自治区訪問に前向きな姿勢を示した。今回、習氏と会談した国連事務総長は「中身のある訪問」に期待を表明したが、中国当局はこうした点を発表していない。

 中国はこの大会に、「ともに未来へ」とのスローガンを掲げる。だが、人権や自由の価値を共有できない未来は暗い。国際社会の重い問いかけに、中国政府は正面から答えるべきだ。

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    駒木明義
    (朝日新聞論説委員=ロシア、国際関係)
    2022年2月8日10時22分 投稿
    【視点】

    2014年のソチ五輪で、ホストのプーチン大統領から特に厚遇を受けたのは、安倍晋三首相でした。ロシアでの同性愛者差別を問題視する欧米の多くの首脳が出席を見合わせる中、開会式に駆けつけたためです。プーチン氏はソチにある自身の別邸に安倍氏を招き、

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