(どうみる統計不正)「人口1.2億人」も、うそかも 文筆家・鈴木涼美さん=訂正・おわびあり

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 国土交通省の統計不正が明らかになり、漫画「進撃の巨人」を思い出した。時の王が壁の中の住民たちの記憶を書き換えて、壁の外の記憶を全て消し、実際に経験した歴史とは異なる歴史を信じ込ませることで統治していた。それは今の日本みたいだなって。

 統計は基本的には「歴史」で、それを変えるということは国民の記憶を変えるということ。その国の歴史をもう追えなくなるというレベルの重罪だと思う。

 ペン先と消しゴム一つで変えるというのは、自分らの雇い主である国民への背信行為だ。信じていた歴史がうそかもしれないというのは、もっと大きいニュースのはず。でも国家に対する不信感が生まれる契機になるほどではないようだ。

 今回は、GDP(国内総生産)の算出に関わる数字が書き換えられていた。政権の評価に関わる数字だ。こんな大事な数字を書き換えられたら、この国の言っていることは一切信用できないということにならないだろうか。日本の人口は現在1億2千万人いることになっているが、本当は9千万人かもしれない。

 どうしてこんなことが起きたのか、事実究明はもちろん大事だが、できてしまう体質こそが問題だ。縦割りの役所は全部いったん解体して、ゼロベースで考え直すぐらいの話だと思う。

 歴史が改ざんされたところで明日食べる米がなくなるわけでない。でも民主主義国の我々としてそれでいいのだろうか。表現を規制されても経済成長していて今が裕福ならいいという、全体主義的な国家を批判してきたにもかかわらず。

 人々の良識と知性が残っているうちに現状にあった政治システム、あるいは官僚システムにつくり直せば、間違いが起こらないようにすることができると信じるべきだ。歴史を振り返ればこの国にもレジームチェンジ(体制の転換)はあった。制度を変えられないのは国民性ではない。全体主義の国と違って、日本は民意を反映して変えるシステムが一応はちゃんと残されている。そんなに絶望しないでほしい。(聞き手・有近隆史

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 すずき・すずみ 38歳。東京大学大学院修士課程修了。日本経済新聞記者を経て文筆家に。著書に「『AV女優』の社会学」「ニッポンのおじさん」「JJとその時代」など。

 <訂正して、おわびします>

 ▼8日付社会面「どうみる統計不正」の記事につく文筆家・鈴木涼美さんの略歴で、「著者に」とあるのは「著書に」の誤りでした。