(社説)EU原発回帰 日本の選択肢ではない

[PR]

 欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会が、一定条件のもとで原発を地球温暖化対策に役立つエネルギーと位置づけた。しかし原発の活用については、EU内でも意見が割れている。様々な条件が異なる日本で、原発回帰の議論に結びつけるのは早計だ。

 欧州委は、環境に配慮した持続可能な経済活動を列挙する「EUタクソノミー(分類)」を設けている。今回、これに原発や天然ガス発電を追加した。実際にどんなエネルギーを使うかは各国の自由だが、事業への投資を呼び込みやすくなると、欧州委はみている。

 原発の追加に対し、脱原発を進めるドイツのほか、オーストリアなど4カ国が反対を表明していた。しかし発電の多くを原発に頼るフランスは歓迎するなど賛成が優勢で、原発の「グリーン認定」は認められるとみられる。

 EUタクソノミーは、水や生態系の保護、公害防止などに重大な害を及ぼさないことが条件だ。原発は高レベル放射性廃棄物処分場の具体的な計画などを要件とし、新増設や運転延長も規制当局の許可を得る期限を設けている。天然ガスは二酸化炭素排出量の上限を定め、石炭火力からの置き換えなどに限る。

 今回の決定は、石炭や石油火力から再生可能エネルギーへの移行期間における過渡的な選択との位置づけだが、今後、どれだけの原発が条件を満たし、各国が利用を進めるのかは、わからない。欧州は旧ソ連チェルノブイリ原発事故の影響も受けた。今回の原発の位置づけを、環境団体は「グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)」と非難する。

 日本の電力業界などからは歓迎の声があがる。しかし、東京電力福島第一原発の事故で経験したように原発事故が起きれば、生活への打撃は極めて大きく、環境も「重大な害」を被る。地震や火山が多く、台風も常襲する日本は、欧州とは自然条件が違い、同一には議論できない。

 高レベル放射性廃棄物について、日本では地下に埋める最終処分地をめぐって「文献調査」は始まったが、その先は不透明で、見通しはついていない。万年単位の長期間にわたる地下の安定性を確認するには、今の科学知識や技術では限界もある。

 原発は経済的にも有利ではないことが明確になりつつある。経済産業省が昨年公表した試算では、2030年の発電単価は太陽光発電が原発を下回った。可能な限り原発依存度を下げ、再生可能エネルギーの導入を進めるという政府の方針を忘れずに、脱炭素に取り組むべきだ。

連載社説

この連載の一覧を見る