(社説)コロナと高齢者 「命を守る」に全力を

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 岸田首相が新型コロナ対応の「まん延防止等重点措置」を、沖縄など5県で解除する方針を明らかにした。県の意向を踏まえ、感染拡大がピークを越えたと判断した。

 ただ、新たな感染者はなお多く、検査が十分に行われているかとの懸念もくすぶる。延長される17道府県とともに、対策を緩めるわけにはいかない。

 いまの「第6波」で大きな問題となっているのが、命を落とす人の急増だ。今月に入り、全国の死者数は前日を上回る日が相次ぎ、過去最多を更新して200人を超える日が続く。

 その多くがお年寄りだ。オミクロン株の特性を映し、コロナの重症化よりも、感染で体力が弱り、持病を悪化させる人が目立つという。

 高齢者が暮らす福祉施設でクラスター(感染者集団)が発生しても、病床不足で入院できず、施設内で感染を広げる悪循環が多く報告されている。診療の遅れから、守れる命を失う事態は避けねばならない。保健所をはじめとする行政と医療機関、福祉施設が連携を密にし、全力で対応してほしい。

 最も深刻なのは、都道府県別の死者が最多の大阪府だろう。

 高齢者施設でクラスターが続出する一方、府が軽症・中等症用に用意した病床は満杯で、感染者が病院に移れない。生活の拠点である施設を閉じるわけにはいかず、内部を区域分けして対応しているが、医療スタッフの乏しさもあって手が回らず、死者の9割を70歳代以上が占める状態になっている。

 大阪では昨春の第4波でも、高齢者施設で多数の死者が出る事例が続いた。その教訓を踏まえて備えを尽くしたか、大阪府・市は厳しく問われよう。まずは考えうる対策を一つひとつ講じていかねばならない。

 施設への訪問診療を強化する。医療面の助言や要員の派遣支援を充実させる。病床とは対照的に空きが多い宿泊療養施設に医師や看護師を置き、症状が軽くなった入院患者の転退院を進める――。

 大阪での取り組みは、同じ課題を抱える他の地域の参考にもなるはずだ。行政と民間、医療と福祉の垣根を越えて、検査から診察・治療まで一体で対応できる態勢の整備を目指したい。政府も、要員が足りない地域への応援者の確保や財政措置など、必要な支援と協力を尽くさねばならない。

 特に急ぐべきは、3回目のワクチン接種である。入所者が移動せずに済む訪問型が望ましい。施設で働く職員への接種も欠かせない。病院で治療にあたる医療関係者と同様、国民の命を守る土台である。