(社説)ヘイト規制合憲 判決踏まえ根絶に進め

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 ヘイトスピーチは許されないという司法が示した明確な見解を踏まえ、根絶への取り組みを推し進めなければならない。

 大阪市のヘイト対処条例が表現の自由を保障する憲法に違反するか否かが争われた裁判で、最高裁は合憲と判断した。

 全国の自治体に向けた指針になる判決だ。その説くところを理解し、それぞれの地域で何ができるか、何をすべきか、議論を深めてほしい。

 市条例は全国初のヘイト規制条例として16年に制定された。国外出身者への差別的言動が対象で、拡散させないために市は必要な措置をとると明記。議会の同意を経て設置する審査会の意見を聞くなどの手続きを経たうえで、違反した者や団体の名を公表する制度も導入された。

 個人に対する差別表現であれば、刑事・民事上の責任を追及する道もある。だが不特定多数が相手の場合は対応が難しく、在日コリアンら外国にルーツを持つ人々を侮蔑するデモや集会が絶えない。行政による対応が求められるゆえんだ。

 最高裁は、ヘイトスピーチを「人種や民族を理由に、特定の人々を社会から排除するなどの不当な目的で公然と行われる」「差別の意識や憎悪を誘発・助長し、生命・身体への犯罪行為を扇動する」と批判し、「抑止する必要性が高い」と述べた。そして、条例が規制するのは過激で悪質性の高い言動に限られているなどと指摘し、合理的で行きすぎはないと結論づけた。

 民主主義の根幹をなす表現の自由を縛ることに慎重であるべきは言うまでもない。一方で、人を深く傷つけ恐怖や不安に陥れる差別表現は、明らかに人権を侵害する行為だ。放置すればさらなる差別を生む。

 大阪市にやや遅れて同じ年にヘイトスピーチ解消法が成立したが、具体的な規制や罰則のない理念法であり、自治体レベルで深掘りする動きが進む。

 18年にできた東京都条例は違反者の公的施設の利用を制限する規定を置き、19年の川崎市条例は刑事罰を設けた。愛知県なども制定をめざしている。

 表現の自由を尊重しつつ、ヘイトスピーチをなくす仕組みをつくるのは容易な話ではない。被害の実態を把握し、制限する言動、違反したときの制裁、発動する手続きなどを慎重に検討する必要がある。めざすのは、差別を許さない意識を住民で幅広く共有し、少数者の権利を守る社会を築くことだ。

 解消法成立の際、国会は付帯決議で、ネット上のヘイトスピーチの解消や、表現行為にとどまらない差別的な取り扱い全般の是正を求めた。国・自治体に課せられた重い使命である。