(社説)保険不妊治療 患者本位の見直しに

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 体外受精などの高額な不妊治療が、4月から公的医療保険の対象になる。菅前首相が政権の目玉政策に掲げ、政治主導で進められた見直しだ。

 保険適用になると、患者が医療機関で支払う窓口負担は原則3割になる。経済的な負担が軽くなり治療を受けやすくなる人にとっては朗報だ。これまで医療機関ごとでばらばらだった治療内容や費用の標準化、透明化が進むことも期待される。

 ただ、全ての治療が保険の対象になるわけではない。保険適用の拡大と引き換えに、国の助成制度はなくなる。むしろ負担が増え、治療の選択肢が狭まることを心配する声もある。

 今回の見直しが患者の利益にかなうものとなるのか。実施状況をみながら、制度のありようを含め、不断に見直していくことが求められる。

 不妊治療はこれまで、原因となる症状の治療など一部が保険の対象で、大半は自由診療だった。代表的な不妊治療の一つの体外受精は1回平均約50万円と言われ、国は費用の一部を助成する方法で対応してきた。

 今回、こうした体外受精や、顕微鏡を見ながら精子を卵子に注入する顕微授精など、関係学会が有効性や安全性を認めた治療が新たに保険の対象になる。

 ただ、不妊治療では患者の状態に合わせて様々な治療方法を試みることが少なくない。保険の対象になっていない技術などを組み合わせると自由診療とみなされ、全額自己負担になるという課題が残る。

 厚生労働省は、こうした技術は保険診療との併用が可能な「先進医療」に取り入れ、患者の負担が過重にならないようにしたい考えだが、何を対象とするのか、本格的な議論はこれからだ。

 先進医療はあくまで、将来的な保険適用を視野に入れたものだ。この仕組みでどこまで対応可能か、注視する必要がある。

 保険の適用を受けられるのは、治療を開始する時点で女性の年齢が43歳未満などの条件もある。年齢が高くなると治療の効果が得られにくくなり、流産のリスクが高まるためだ。患者への丁寧な説明や啓発が欠かせない。

 不妊治療については費用負担の重さと並び、仕事との両立の難しさもかねて指摘されている。休みを柔軟に取れるようにするなど、働きながら治療を受けやすい環境も整備すべきだ。

 不妊治療を受けやすくしても、それで深刻な少子化に歯止めがかかるわけではない。子どもを産み、育てやすい社会に変わるには、解決すべき問題が山積していることを忘れてはならない。