(社説)強制不妊に賠償 司法の提起にこたえよ

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 正義・公平とは何か。その実現のために何をなすべきか。司法が提起したこの問題を政府・国会は正面から受け止め、対応を検討しなければならない。

 旧優生保護法の下、障害を理由に不妊手術を強いられたとして、近畿地方の3人(1人は配偶者)が国を訴えた裁判で、大阪高裁は総額2750万円の支払いを命じた。旧法は個人の尊重や幸福追求権、法の下の平等を定めた憲法に反し、原告らは違法な立法行為によって権利を侵害されたと断じた。

 旧法を違憲とする判断は、これまでも別の被害者が起こした訴訟で何度か示されている。だが、不法行為から20年が経つと請求権がなくなる「除斥期間」の考えが立ちはだかり、賠償は認められなかった。今回の原告らも手術を受けたのは半世紀ほど前で、旧法が廃止された1996年から数えても、提訴までに20年以上経過していた。

 この点について高裁は、原告らは旧法に基づいて手術されたことすら知らされず、裁判に訴える道があることも最近になるまで認識していなかったと指摘。「除斥期間をそのまま適用するのは著しく正義・公平の理念に反する」と述べた。

 子を産み育てるか否かを決める自由を奪われたという被害の重大さを思い、厚い壁を何とか乗り越えようという、裁判所の強い意志がうかがえる。

 人権を守るべき国が、逆に人権を傷つける施策を推進し、障害者に対する差別や偏見を助長した。その結果、原告らは訴訟を起こす前提となる情報を得たり、専門家に相談したりする機会を失った――。原告らの過酷な人生にしっかり向き合った判決理由は、説得力に富む。

 ただし裁判所が手を差し伸べることができるのは、目の前の原告に限られる。不妊手術を施された人は約2万5千人にのぼるとされ、立法・行政による包括的な対応が不可欠だ。

 国会も何もしてこなかったわけではない。19年に被害者に一時金を支払う法律を制定した。しかし責任を明確に認めたものではなく、額も320万円と被害に見合うものとは言い難い。

 法施行からほどなく3年になるのに、請求は1100件余にとどまる。制度を知らない。根強い差別を恐れて名乗り出られない。そんな被害者が多いとされ、一部の県では手術の記録が残る人に通知を出し、手続きをとるよう促している。国はプライバシー保護を理由に消極的だが、こうした取り組みも参考に運用の改善を急ぐべきだ。

 いまの救済枠組みは救済の名に値するのか。どんな追加策が必要か。高裁判決を踏まえた真摯(しんし)な議論が求められる。