(社説)ロシアの威嚇 核の連鎖あおる危うさ

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 人道に反する究極兵器である核による威嚇に、ロシアが踏み込んだ。侵略に加えた核攻撃の示唆に対し、国際社会は最大限の抗議を発せねばならない。

 プーチン大統領による「抑止力の特別態勢」命令である。ロシア軍が核戦力をいつでも使える構えをとるよう指示したものだ。ウクライナと、支援する米欧を牽制(けんせい)する狙いだろう。

 侵略に加担した親ロ派の隣国ベラルーシでは、「領土の非核化」という国是をなくす憲法改正が進んでいる。プーチン氏の意向に沿い、ロシア軍の核配備に向けた動きとみられる。

 プーチン氏は侵攻前も、「我々は最強の核大国だ」「介入すれば経験したことのない結果を招く」と発言していた。

 無法な侵略に手出しをさせないために、世界の安全を人質に取った脅しだ。プーチン氏は、国連安保理常任理事国と核保有国としての責務を果たす考えはないことがはっきりした。

 国際社会の対応次第では、深刻な悪影響の連鎖を広げる恐れがある。紛争が絶えない世界各地で、「核があれば優位に立てる」「国を守るには核武装しかない」といった単純な考え方を誘発しかねない。

 その意味で今回のロシアの行動は、世界が堅持すべき核不拡散体制への重大な挑戦である。核による脅しも他国の主権侵害も、絶対に容認されないことを国際社会は結束した行動で示す必要がある。

 こうしたなかで安倍元首相が不見識極まりない発言をした。米国の核兵器を日本に配備し、有事に日本が使えるよう協力する「核共有」について言及し、「世界の安全がどう守られているかという現実についての議論をタブー視してはならない」などと述べた。

 戦争被爆国としての自覚と責務がみじんも感じられない。国際秩序が揺らぎ、核が拡散する未来の先に、日本を含む国際社会の平和と安全はないという現実こそを直視すべきだ。

 「核共有」について岸田首相は国会で質問され、「非核三原則を堅持するという我が国の立場から考えて、認められない」と否定した。当然である。

 政府にいま求められるのは、プーチン氏の暴挙にはっきりと異を唱えて国際的な圧力を強めるとともに、核軍縮や不拡散の取り組みが減速しないよう世界に働きかけることだ。

 そもそも核抑止論は、当事者の理性的な思考を前提にしているが、プーチン氏はそれも疑われている。核兵器が国際政治の具として存在する限り、破局のリスクはぬぐえない。核廃絶という目標の大切さを、今回の戦争が浮き彫りにしている。

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