(社説)ロシアの侵略 反戦のうねりに連帯を

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 平和は人間のすべての営みの基盤である。侵略に対し、各国政府に加え、市民や団体、企業が抗議のうねりを起こしているのは深い危機意識の表れだ。

 ロシアのプーチン大統領は侵攻前、「我々は世界経済の一部だ」と語り、欧米を牽制(けんせい)した。冷戦期と違い、相互依存が深まった世界は強い対抗策をとれまいと、みくびったのだろう。

 その認識を過ちとするためにも、各国政府や企業は目先の立場や損得勘定を超えて力を結集する時だ。ウクライナの危機を我がこととして、さらなる圧力を多面的に広げたい。

 国際社会が何より勇気づけられるのは、ロシア国民からも相次ぐ「戦争ノー」の声である。

 気候変動に関する国際会議でロシアの代表は、戦争を止められなかったことを謝罪した。国際協調が不可欠な地球規模の課題に取り組むなかでの苦悩は、想像にあまりある。

 国を背負って世界を転戦してきたフィギュアスケート元五輪代表は、SNSの自らのページを黒く染めて抗議した。プーチン政権に近いとして欧米の制裁対象にされた富豪も、停戦を訴えている。

 ロシアで政権に異を唱えれば身の危険に直結する。報道関係者や反政権活動家らの暗殺は、あとを絶たない。それでも開戦以来、各地で抗議デモが起き、5千人以上が拘束された。

 権威主義体制下でも、良心に従って敢然と立ち上がる人々がいる事実は、ロシアの市民社会が健全な根を張っていることを物語る。

 プーチン政権は情報発信への締め付けを強めている。報道機関には「戦争」の言葉を禁じ、「特別作戦」と呼ぶよう求めている。独立系メディアの放送中止なども相次いだ。

 裏返せば、それだけ国内世論を警戒しているのだろう。ロシアは形式上は三権分立で選挙を行う国であり、強権指導者といえども支持率を案じている。

 プーチン政権は国際社会だけでなく、自国民も欺いてきた。ゆがんだウクライナ情報を流布しつつ、侵攻の意図を繰り返し否定してきた。今回の戦争の責任を、一般のロシア人に帰することはできない。

 昨年にノーベル平和賞を受けたロシア人の新聞編集長ムラトフ氏は、核兵器廃絶国際キャンペーン事務局長と連名で「今こそ行動する時だ」との声明を出した。現状を重大な核危機ととらえ、世界に民主主義と言論の自由への支持を呼びかけた。

 人命を奪い、経済を滞らせ、秩序を壊す侵略の被害者は、ロシア人を含む全世界の市民だ。戦争の即時停止に向けて、国際的な連帯を強めていきたい。

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