(社説)日興幹部逮捕 厳正に真相の究明を

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 SMBC日興証券の専務執行役員ら4人が、金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で東京地検に逮捕された。大口の売り注文を市場外でさばく「ブロックオファー」と呼ばれる取引にからみ、売買の基準にする市場価格を安定させるため、日興が自己勘定で大量の買い注文を出していた疑いがあるという。

 4人全員が容疑を否認しているといい、違法性の有無はまだ分からない。ただ、地検の疑いが事実であれば、幹部役員が関与した組織的な違法行為にあたることになり、法人としての刑事責任を追及される可能性がある。証券市場での公正な価格形成や取引参加者間の公平性を根底から疑わせる事態になりかねず、厳正な究明が必要だ。

 SMBC日興証券の近藤雄一郎社長は5日の会見で、役員を含む複数の逮捕者を出したことを反省するとして陳謝し、関係当局の捜査に誠実に対応していくと述べた。外部弁護士による調査委員会の設置も公表した。新規のブロックオファー案件は停止しているという。いずれも当然の措置であり、経営責任も含め、第三者の視点による厳格な検証が不可欠だ。

 これまでの社内調査では、ブロックオファーに関連した不適切な取引を防ぐための社内ルールや審査体制が不十分だったことが確認されたという。近藤社長は、問題にされた自己勘定での買い付けについて、市場の公平性や公正性に疑問を生じさせる可能性があることは明らかであり、「自社の行動規範に反する行為として控えるべきだった」との認識も示した。

 日興は2012年に元執行役員がインサイダー取引容疑で逮捕・起訴され、会社としても金融庁から行政処分を受けた。その後も社員がインサイダー事件を起こしている。こうした事案を経てなお、法令順守や情報の管理に不備があったとすれば、それ自体で証券会社としての業務の適切性の大前提に大きな疑問符をつけざるをえない。

 しかし、5日の会見でもあいまいな説明が目立ち、文書での公表はほとんどない。捜査との兼ね合いで限界はあるかもしれないが、大手の一角として市場取引や営業を続けている以上、可能な限り説明に努めなければ信頼は保てないだろう。

 株式市場では一部の大口顧客らが優遇されているのではないかとの疑念がつきまとい、家計が株を縁遠く感じる一因になってきた。今回のような疑惑を拭えなければ、歴代政権や業界が掲げてきた「貯蓄から投資へ」や「資本市場の機能の十全な発揮」も絵に描いた餅に終わる。そのことを関係者は改めて自覚すべきだ。