(社説)電力の逼迫 抜本的な備えの強化を

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 電力不足への備えがいかにお寒いか。実態が露呈した。

 経済産業省が、初の電力需給逼迫(ひっぱく)警報を東京、東北両電力管内に出した。先週の地震で福島県などにある火力発電所が稼働できなくなったところに、季節外れの寒波が襲って暖房需要が増え、需給が厳しくなった。

 東電管内に警報が出されたのは連休最終日の21日夜。最新の天気予報を受け、翌22日にはエリア外からフルに送電を受けても、供給余力が安定供給に必要な3%を大きく下回るとして、生活や経済活動に支障がない範囲で節電を呼びかけた。

 東日本大震災後、政府は電力逼迫時の対応策を申し合わせ、余力が3%を下回る見通しになったら、前日の午後6時をメドに警報を出すことになっている。しかし、今回は発表が2時間以上遅れ、さらにその時点では必要ないとしていた東北電管内も当日の22日午前、警報の対象に追加した。

 初動の遅れもあって、22日午前中の節電量は東電の目標の3分の1にとどまった。午後に萩生田経産相が緊急会見し「このままでは広範囲での停電を行わざるを得ない」として一層の節電を要請。暖房温度を下げたり、工場が操業を取りやめたりする協力が進んで節電量が倍増し、停電は回避されたが、手放しでは喜べない。

 電力は昨年1月にも、燃料不足による全国的な供給不足が起きた。自由化で採算が悪化した火力発電所の休廃止が加速するなど供給体制は過渡期にあり、夏冬のピーク期を中心に厳しい状態が続く。安定供給には需給状況を見える化し、節電などに幅広い参加を促してバランスを図ることが欠かせない。

 しかし、先週の地震による発電所の損傷が供給にどう影響するのか、電力業界も経産省も分かりやすく示しておらず、需給逼迫は大半の利用者には寝耳に水だった。政府や東電は直ちに経緯を検証し、節電の呼びかけ方を一から見直す必要がある。

 中長期的に需給を安定させていくには、再生可能エネルギーが主役となることが望まれる。太陽光は天候に左右されやすく、今回も発電量の低迷が逼迫の要因の一つになったが、比較的早く稼働できる利点もある。風力などとうまく組み合わせ、脱炭素社会をめざす流れとの両立を図りたい。蓄電技術の開発や、周波数の違う東日本と西日本の間も含めた広域送電網の強化も大切だ。

 需給改善に、原発の活用を挙げる声もある。しかし、原発の稼働は新規制基準への適合や避難計画の整備が前提であり、目先の需給と直結させて議論すべきではない。

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    能條桃子
    (NOYOUTHNOJAPAN代表)
    2022年3月24日22時28分 投稿
    【視点】

    今回の家庭への節電を要請して次以降も乗り切れるのか、より計画的に避ける方策が必要だと思います。 家庭の電力は、高齢者や病気を持つ人など、命に直結するライフラインとしての役割を果たしている場合もあり、一律に不便な停電という面で済まされません