選句は「作者と私との対話」 朝日俳壇、新選者に小林貴子さん

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 朝日俳壇の選者に、現代俳句協会副会長で俳誌「岳(たけ)」編集長の小林貴子さん(62)が4月から加わる。1月に退任し、先月死去した稲畑汀子さんの後任となる。

 長野県飯田市生まれ、松本市在住。信州大学在学中の1981年、信州大学学生俳句会と松本市に本拠を置く「岳」俳句会に入って俳句を始め、「岳」主宰の宮坂静生さんに師事した。

 82年から97年まで「鷹(たか)」俳句会にも所属。創刊主宰の藤田湘子(しょうし)は「まぎれなく稀(まれ)に見る大型新人」と絶賛した。

 俳句を始めたころを、こう振り返る。「文学少女ではあったけれど、社会とうまく接触できず、心の中の泥炭を抱え、硬くうずくまっている状態だった」。だが季語の世界、例えば実物の銀ヤンマ、滝、冬山などと出会うことで心が豊かなもので満たされ、呼吸が楽になっていったという。

 だから今も作句の基本は「季語と仲良くすること」だと話す。「その季語に新しいテイストを少しでも盛り込んで、自分なりに新しい地平に出たい」

 句風は自在。父の臨終に際して詠んだ〈命終(めいじゅう)の銛(もり)打つは誰(た)そ月の夜〉のような荘厳な句も、〈大阪の夜のこてこての氷菓かな〉といったユーモアあふれる句もある。句集に「海市(かいし)」「北斗七星」「紅娘(てんとむし)」、星野立子賞を受賞した「黄金分割」がある。

 選句は「作者と私との対話」と言う。評は「私はこんなふうに心を動かされました」ということを素直に書きたい。選者とは、俳句と読者との架け橋で、作者から受け取ったバトンを読者に手渡す役目でもあると思っている。「気負わず、良い句を見つけて、読者の方々に届けたい」

 朝日俳壇の選者になることが決まってから、担当記者の私に来たメールにこうあった。「身の引き締まる思いです。キュッ!」(西秀治)