(社説)世界の難民 人道の原則貫く契機に

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 世界で紛争や迫害により国を追われた人々は、ゆうに8千万人を超える。その現状に思いを巡らせ、難民の受け入れ拡大を探る転換点とすべきだ。

 ウクライナから戦禍を逃れた20人が、政府専用機で日本に到着した。林芳正外相のポーランド訪問に合わせ、希望者を募って受け入れた。

 すでに親類らを頼って自力で来日していた人を含めると、400人を超える。今回到着したなかには、身寄りのない人も4人いる。誰もが安心して暮らせる環境づくりを急ぎたい。

 政府はまず3カ月間の「短期滞在」とし、1年間働ける「特定活動」への切り替えと更新も認めるという。そうした法的な措置に加え、新生活の立ち上げには様々なケアが必要だ。

 住まい、医療や教育などで、自治体やNPOなどとの連携は欠かせない。雇用に前向きな企業もあり、本人の希望を聞きながら調整してほしい。

 紛争の避難現場に日本の閣僚が足を運び、人々を政府機で連れ帰ったのは、極めて異例だ。緊急的な人道支援として評価できる一方、この特別措置に踏み切った理由は何か、今後の難民問題にどう向きあうのか、政府は説明するべきだ。

 今のウクライナに限らず、中東やアジアなどで故国を脱した人々の生命や権利をどう守るかという問題は深刻化している。近年、内戦が続くシリアからは600万人以上が流出し、欧米を中心に政治問題化した。

 そんななか、日本の門戸の狭さは広く知られる。2020年は主要7カ国の各国が数千~数万人を受け入れたのに対し、日本の難民認定は47人。人道上の配慮で滞在できた人を含めても100人に満たない。

 年間の難民申請は数千件にのぼるが、入管庁は「難民を偽装したものが多い」としている。確かに適正な審査は必要だが、国際水準を逸脱した対応で救いの手を控えるなら、日本の人権感覚が疑われる。

 入管現場では強引な扱いも目立つ。難民認定されず、ただちに強制送還されたケースの訴訟で、二つの高裁が昨年、入管側に賠償を命じた。裁判を受ける機会を奪った憲法違反まで指摘された。

 これまでの政府の狭量な姿勢からすれば、画期ともいうべき今回の支援である。一時的な外交効果を狙う政治パフォーマンスであってはなるまい。

 国を問わず、欠乏と恐怖から個人を守る「人間の安全保障」を、日本外交は看板の一つに掲げてきたはずだ。難民条約に加わって40年あまり。改めて人道の原則に立ち返り、一貫性のある難民政策を練るときだ。