(社説)円安の進行 急激な変動 軽視するな

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 円安が進み、一時1ドル=126円台と約20年ぶりの安値になった。コロナ禍からの回復やロシアのウクライナ侵攻に伴う世界経済の局面変化が背景にあるが、外国為替相場の急激な動きは好ましくない。政府や日本銀行は打撃を最小限に抑えるよう柔軟な対応を心がけるべきだ。

 円安になると、日本からの輸出が有利になり、海外投資からの利益も円建てでは膨らむ。だが、輸入品は割高になる。特に、日本が海外に頼るエネルギーや食料品、原材料は、そもそもの国際価格が急上昇しており、その影響が増幅される。

 日銀の黒田東彦総裁は、円安が「全体として日本経済にプラス」との見方を示しているが、工場の海外移転のため輸出増が以前より起きにくいことは認めている。一方で、賃上げが不十分なまま必需品が大きく値上がりすれば、家計にはマイナスだ。1カ月余りで10円以上もの円安の影響は軽視できない。改めて注意深い点検が必要だ。

 今回の円安進行のきっかけは、日米の金融政策の差が鮮明になったことだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が物価高の抑制のため利上げにかじを切った一方で、日銀は強力な金融緩和を続ける姿勢をとる。

 力強い需要回復が続く米国と比べ、日本経済はコロナ禍からの浮上が遅れ、賃上げもまだ鈍い。エネルギーなどの高騰は、景気を腰折れさせる要因にもなりうる。先月の日銀の調査では、企業の景況感も悪化に転じた。現状で、日銀が金融緩和を続けることは理解できる。

 ただ、経済の先行きが不透明であるだけに、為替の安定を保つことも重要だ。難しい局面であればこそ、当局者の発言が相場に不用意な影響を与えないよう細心の注意がいる。投機的な動きが相場を左右しそうな場合には、適切なメッセージを出すことも求められる。

 加えて、金融緩和を続ける中でも、金利操作手法などの工夫によって為替の過度の変化を可能な限り避けることを考える必要がある。日銀は今月末の金融政策決定会合で、四半期に一度出す「経済・物価情勢の展望」を議論する。ウクライナ情勢や米国の利上げ、そして急激な円安進行といった論点を十全に検討し、新しい状況に臨める選択肢を準備すべきだろう。

 問題は足元の為替動向だけではない。中長期的にも、世界経済には大きな変化をもたらしうる要因が増えている。米中対立に加え、対ロシアも含めた分断の広がり。「長期停滞」が懸念された米欧のインフレへの転換。脱炭素への歩み。その中で、日本経済のかじ取りも問われていることを銘記すべきだ。