(社説)党首討論 原点に返り早期開催を

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 首相が岸田氏に、野党第1党の立憲民主党の代表が泉健太氏に、それぞれ交代して以降、党首討論は一度も開かれていない。長引くコロナ禍やロシアのウクライナ侵略など、与野党のトップが国民の前で、大局的な見地から議論を深めるべきテーマは山積している。与野党に早期開催を求める。

 英国議会をモデルにした党首討論は、国会審議の活性化と政治主導の政策決定の確立をめざしたものだった。正式に導入された00年には8回、その後も06年までは年4~7回開かれた。しかし、徐々に回数は減り、第2次安倍政権発足以降は年1、2回、17、20年はついに一度も行われなかった。

 せっかく制度をつくっても、それを生かそうという当事者の意思が失われれば、形骸化が進む。14年には、与野党が月1回の実施を申し合わせ、18年には、超党派の議員が、国民への説明責任を強化するため、さらに頻度の高い開催を提言したが、一向に実現していない。

 首相の出番を減らして、失点を避けたいという、与党側の思惑ばかりではない。野党も、より長い質疑時間を確保できる、予算委員会の集中審議の方を求めがちだからだ。

 党首討論の時間は全体で45分間で、これを複数の野党党首に割り振るため、例えば菅政権下で開かれた前回21年6月は、立憲民主党30分、日本維新の会、国民民主、共産の各党が5分ずつだった。立憲以外の各党は細切れで、これではまともな議論は成り立たない。

 ならば、全体の時間を長くしたり、開催頻度を増やしたりするなかで、各党に十分な時間が行き渡るよう工夫すべきだ。制度導入の原点に立ち返り、与野党のリーダーが対等な立場で議論を戦わせるための舞台づくりに、知恵を絞る必要がある。

 安倍・菅政権下では、首相側が質問に正面から答えず、自説を長々と一方的に語る場面が多く、討論には程遠い有り様だった。「聞く力」を掲げる岸田首相と、政策提案を重視する泉氏には、党首討論の意義を再認識させてくれるような、建設的なやりとりを期待する。

 首相にはひとつ注文がある。問われるのは、政治家としての見識である。これまでの国会答弁で多用している「検討する」は、この際、封印して臨んでもらいたい。

 国会閉会後には参院選が控える。岸田政権にとっては、初めての中間評価であり、昨秋の衆院選で敗北した野党にとっては、再生をかけた正念場である。党首討論を、有権者が各党の政策や党首の力量を見極めるための貴重な機会としたい。

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