(社説)韓国新政権 首相訪韓で関係改善を

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 長く冷え切ったままの韓国との関係を正常な軌道に戻さねばならない。来月にある尹錫悦(ユンソクヨル)・新大統領の就任式は、その好機である。岸田首相が出席し、両首脳で協調して関係を刷新する姿勢を示すべきだ。

 岸田首相はきのう、尹氏が派遣した外交顧問らの代表団と面会した。その際、尹氏からの親書も手渡されたという。

 尹氏は大統領選で勝利する前から、対日関係を改善させる必要性を重ねて訴えてきた。

 トップ同士が互いに往来する日韓シャトル外交は、10年以上も止まったままだ。着任して1年以上になる韓国の駐日大使は、いまだに首相だけでなく外相にも面会できていない。

 こんな異常な隣国関係を正すのは両政府の責務だ。

 尹氏側は公式には言及していないが、日本との外交を滞らせた文在寅(ムンジェイン)現政権との違いを示すためにも、首相の就任式出席を望んでいる。

 就任式には、これまでも小泉純一郎氏、福田康夫氏ら現役の首相が出席し、早々に首脳会談を開いてきた前例がある。課題が山積するからこそ自然に初顔合わせできる機会を逃さず、対話を起動させてほしい。

 自民党内に反対の声があるほか、外務省も慎重な構えだ。最大の支障の一つは、徴用工訴訟で賠償を命じられた日本企業の資産が、今夏にも現金化される可能性があることだ。

 日本側は夏の参院選もにらみ、歴史問題の進展が見えないなかでの首相訪韓は政治的リスクが高いとの懸念がある。

 そんな憂慮に応えるためにも尹氏はまず、現金化は望ましくないとの考えを鮮明にし、外交的解決を図るのだという意欲を明示してもらいたい。

 歴史問題は、ナショナリズムの高揚につながりかねない難題である。だからこそ市民レベルでの相互理解が不可欠であり、その環境を整えることは政治の重要な役割だ。

 米国のバイデン政権は2月に公表した「インド太平洋戦略」で、日韓関係の強化促進を掲げた。バイデン大統領は、来月に東京で開催予定の日米豪印首脳会合に出席する前に訪韓する方針で、日米韓3国の足並みを整えたい意向だ。

 米中対立の行方は見通せず、ロシアによる侵略も起きて、第2次大戦後の国際秩序は大きく揺らいでいる。北朝鮮はまたも大規模な軍事パレードを行い、金正恩(キムジョンウン)総書記は核開発の強化に言及した。

 混迷する世界情勢のなかで、自由主義の価値観を共有する日韓が外交対話を正常化させ、地域の諸問題に協調して取り組むことが、時代の要請である。