(社説)特殊詐欺再燃 対抗力高め被害を防ぐ

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 この数年、減少傾向にあった特殊詐欺が再び広がっている。

 全国の警察の認知件数は昨年1万4千件超(被害総額278億円)と前年より6・7%増え、今年に入ってからもそれを上回るペースで伸びている。

 ターゲットは相変わらず、お年寄りだ。かかえる不安の3大要素といわれる「お金、健康、孤独」につけ込む手法が、より巧妙になっている。

 相談体制の整備や、注意喚起のための広報の強化は引き続きの課題だ。政府が進める孤独・孤立対策においても、高齢者をめぐるこの問題をしっかり位置づけ、被害の拡大を食い止めなければならない。

 特殊詐欺には振り込め詐欺オレオレ詐欺、架空料金詐欺と様々な手口があるが、いま横行するのは「還付金詐欺」だ。役所の職員を装って電話をかけ、「医療費が戻ってくる」「未支給の年金がある」などと言って誘い出し、ATMを操作させて、逆に犯人の口座に金を振り込ませるというものだ。

 ATMの多くはその性質上、他人の目が届きにくい場所に置かれている。金融機関は、一定期間ATMを利用していない高齢者には店舗の窓口での出入金を勧めたり、ATMの前で携帯電話を耳に当てている人がいれば、職員が声をかけるよう努めたりしているが、防ぎきれていないのが現実だ。

 犯罪の実態の解明は容易ではない。多くの者で役割を分担するため、警察では暴力団などの組織犯罪を取り締まる部署が所管して捜査しているが、昨年、逮捕・書類送検した2365人のうち首謀者やリーダー格は45人にとどまるという。

 上層部にたどりつく「突き上げ捜査」の重要性に変わりはないが、何よりだまされる人を一人でも減らすことをめざして、手立てを講じる必要がある。

 その一つがAI(人工知能)の活用だ。かかってきた電話の内容を録音・転送してAIに解析させ、特殊詐欺の疑いがあれば本人や登録された親族にメールなどで注意を呼びかける。NTT東日本、西日本が1年半前に導入したサービスだ。

 東京都品川区は昨年8月から65歳以上の区民を対象に、設置費を公費で負担する事業を始めた。区民は月額440円の利用料を支払う。容疑者の検挙につながったケースもあり、警視庁とNTT東は今年3月末に連携協定を締結。都内1万世帯への導入をめざしている。

 ウクライナへの支援と称する募金詐欺などのトラブルも出ている。だます側は機を見るに敏で、次々と新たな手口を繰り出す。社会全体で対抗する力を高め、被害を抑えたい。