(社説)プーチン演説 許されぬ侵略の正当化

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 プーチン大統領は一体、歴史から何を学んだのか。かつて世界を苦しめた侵略を現代に再現させた罪深さを悟り、ただちに戦闘を停止すべきだ。

 ロシアはきのう、先の大戦でナチスドイツに戦勝した記念日を迎えた。77年前、周辺国への領土拡大とユダヤ人の絶滅計画を進めたドイツが降伏した。

 欧州を解放した当時のソ連の役割は史実として知られる。しかし、後継者を自任するプーチン氏が始めた今の戦争は、当時のナチスのように隣国の人々を蹂躙(じゅうりん)する暴挙である。

 演説でプーチン氏は、侵攻の正当化に終始した。ウクライナによる核開発といった根拠のない脅威論を並べ、「先制攻撃するしかなかった」と述べた。

 念頭にある主敵は、米国であることも言明した。米国に抗して「独自の価値観」を守るという主張には、欧米流の民主主義を拒み、自らの強権統治を貫く決意があるのだろう。

 「世界大戦の惨禍を繰り返させない」。プーチン氏のそんな誓いは空虚に響く。この記念日に向けて、核戦力による脅しを強めたことは国際安全保障への挑戦というべきだ。

 こうした言動の背景には、ウクライナでの戦況をめぐる焦りがあるようだ。ロシア軍は3月に首都の攻略を断念し、東部2州の占領に目標を変えたが、思うように進んでいない。

 記念日が終わった今、プーチン氏にとって政治的に節目となる時期が見えず、戦闘の長期化が懸念される。先日も、住民の避難先だった学校が爆撃される惨劇が起きてしまった。

 日本を含むG7と呼ばれる主要7カ国の首脳は今週、オンラインで話しあった。ロシアの主要な収入源である石油の段階的禁輸を打ち出したほか、ウクライナへの軍事援助を続ける方針を確認した。

 プーチン氏の威嚇に動じることなく、ウクライナの主権と領土を守る闘いを支えるのは当然だ。武力による一方的な現状変更を見過ごせば、国際社会の平和と安全は保てなくなる。

 ただ、戦力が拮抗(きっこう)する消耗戦が続けば、それだけ流血と破壊が深まり、核を含む大量破壊兵器の使用リスクが高まることにもつながる。軍事支援だけで出口が見えるわけではない。

 国連安保理は先週、開戦後で初めてロシアを含めた全会一致の意見表明をした。平和的手段で紛争を解決する義務を「議長声明」で再確認した。

 常任理事国の米国、中国、英仏は責任を果たす時だ。国連事務総長と共に、プーチン氏の過ちを正す粘り強い調整を尽くしてほしい。日本やドイツを含む各国も外交力が問われている。