(社説)韓国新大統領 「自由」守護し、前進を

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 韓国の政権交代が内外に前向きな新風を吹き込むよう願う。尹錫悦(ユンソンニョル)氏がきのう、第20代大統領に就いた。

 大統領執務室はこの日から移転され、権力の象徴だった「青瓦台」は市民に開放された。

 尹氏が就任演説で何度も繰り返したのは「自由」と「民主主義」の重要性である。

 外に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵略に象徴されるように、多くの人々の自由が脅かされ、民主主義は危機に瀕(ひん)している。

 いまの韓国は自由の恩恵を受けて繁栄してきた国だ。

 同じ民族同士が命を奪い合った朝鮮戦争は来年、休戦から70年を迎える。戦争で廃虚と化した韓国はその後、不断の努力で高度成長を遂げ、現在では世界10位の経済大国となった。

 人気グループBTSに代表されるK―POPや映画、ドラマなどの韓流コンテンツは世界を席巻している。

 尹氏は演説で「自由と人権の価値に基づいた普遍的な国際規範を積極的に支持、守護して、グローバルリーダー国家としての姿勢を持つ」と訴えた。巨視的な国際貢献こそ、韓国に求められていることだろう。

 自由や民主主義の強調は、それらと最も遠い北朝鮮を意識している表れでもある。

 今月も2度の弾道ミサイル発射した北朝鮮は、近く核実験に踏み切る可能性がある。

 尹政権では北朝鮮に対する強硬論者らが登用される予定で、南北融和を最優先させた文在寅(ムンジェイン)・前政権から政策を大きく転換させるとみられる。

 確かに軍事挑発をやめようとしない北朝鮮に、対価だけを与えることはできない。一方で、圧力一辺倒では事態は改善できない。信頼関係の構築は、常に対話が基調となることを忘れてはならない。

 歴史問題で冷え込む日韓関係でも、頻繁な意思疎通が欠かせない。就任式には林芳正外相が出席し、尹氏と会談した。

 文政権の5年間は、普遍的な価値の共有という日韓関係の土台自体が危ぶまれた。そんな隣国関係の暗雲を払拭(ふっしょく)するため、岸田首相と尹氏は共に早期会談の実現に努めるべきだ。

 政権は新旧交代したが、国会は野党が多数を占める。政権は野党の声に耳を傾け、国内の統合を図る必要がある。政治報復とみられるような負の連鎖は断ちきらねばなるまい。

 米中対立のはざまで揺れ、足元では超少子化に歯止めがかからないなど、韓国の懸案は多い。国内問題を克服しつつ、地域の安定や地球規模の課題に果敢に取り組む賢明な指導力を尹氏に発揮してもらいたい。

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