(社説)観光船事故 国の対応も検証課題だ

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 知床半島沖での観光船沈没を受けて、国土交通省が設けた有識者会議の議論が始まった。

 教訓をくみ取り、再発を防ぐには、事故に至るまでの国の対応の検証も欠かせない。

 観光船の運航会社は昨年も2度事故を起こし、北海道運輸局の特別監査や立ち入り検査を受けている。提出された運航記録簿がきのう明らかになったが、驚くべき内容だった。

 昨年7月の15日間31回の運航について、風速、波高、視程が全て同じ数値になっていて、社長と船長の認め印があった。

 命を託せる相手とは到底思えぬいい加減さだ。ところが監査や検査を終えた運輸局が10月に作成した書類には、「記録簿関係はきちんと整理されている」「以前より安全と法令遵守(じゅんしゅ)意識が向上したことを確認出来た」などと記載されていた。

 いったい、どこをどう見て、「整理」「向上」の評価を導き出したのか。

 昨年の話だけではない。

 沈没事故の3日前には、国交省が所管する日本小型船舶検査機構による検査もあった。

 その際、船長は事務所との連絡手段を、海上でもつながる衛星携帯電話から普通の携帯電話に変更すると申請。機構は船長に通話可能であることを確認して了承したという。ところが航路の大半は通話エリア外であることが、事故後に判明した。

 乗客の遺族や家族が、これまでの国の指導・監督に不信を抱くのは当然だ。

 これに対し斉藤鉄夫国交相は「(昨年に)特別監査を行ったにもかかわらず事故が起きたことは、真摯(しんし)に受け止める」と述べるにとどまっている。今回の事故を受けて再び実施されている特別監査に目鼻がついた段階で会見を開き、家族や社会が抱く疑問に「真摯に」答える必要がある。

 知床の惨事は、業者の安全管理のずさんさを行政が結果として見逃したという点で、長野県軽井沢町で16年1月に起きたスキーバス事故を想起させる。

 このときは年内に関連する法律を改正するなどして、貸し切りバス事業者に対する規制や監督を強化した。事故歴や行政処分歴なども公開されるようになり、それ以降、乗客が亡くなる事故は起きていないという。

 有識者会議はこうした例も参考に議論を進め、7月中の中間取りまとめを経て、年内に最終報告をする見通しだ。

 小型観光船を運営する業界の実態を調べ、問題点を洗い出すのはもちろん、行政の監督のあり方やそれを支える体制にも踏み込んで、実効性のある安全対策を打ち出す。専門家に課せられた重大な責務だ。