(社説)空自官製談合 OB介した癒着またか
防衛省でまたも、再就職したOBを介した業者との癒着が明らかになった。防衛行政に対する国民の信頼を深く傷つけるものであり、重く受け止めねばならない。事件の背景を詳しく調べ、今度こそ実効性のある再発防止策を講じる責任がある。
航空自衛隊岐阜基地の施設工事の入札情報を漏らしたとして、防衛省近畿中部防衛局の当時の建築課長と同省OBの建設会社社員が、官製談合防止法違反などの疑いで、愛知県警に逮捕、送検された。
2人は建設工事の発注を担当する部署に勤めたことのある、先輩後輩の間柄だったとされる。この春に定年退職した課長は、OBの後任として再就職する予定だったといい、漏洩(ろうえい)はその見返りの可能性があると県警は見ている。不正の温床に天下りがあることは疑いあるまい。
国家公務員法は、在職中に利害関係企業に求職活動をすることを禁止している。
防衛省はさらに、防衛施設庁(当時)の幹部らが逮捕された06年の官製談合事件を契機に、OBを含む業界関係者と接触する場合の対応要領を定めている。職務上必要と認められない接触を禁じ、必要な場合でも、面会場所を制限し、原則として複数の職員で行うとしている。
過去の不祥事の教訓が風化し、一連のルールが空文化してはいないか。事件のあった近畿中部防衛局に限らず、全省的に点検し、改めて徹底することが不可欠だ。
防衛省には専門性や秘匿性の高い特殊な事業が多く、特定の業者に発注が偏りがちになる。現職と再就職したOBが緊密な関係になりやすいともいわれる。一地方防衛局で起きた属人的な問題ととらえるのではなく、構造的な要因にも目を向ける必要がある。
事件の舞台となったのは、電子戦対応能力を強化するための研究施設だった。防衛省は中国の動向などもにらんで、「宇宙・サイバー・電磁波」という新領域への対応に力を入れており、予算も重点配分している。
防衛費全体をみても、8年連続で過去最大を更新。自民党は、北大西洋条約機構(NATO)諸国が目標とする対GDP(国内総生産)比2%以上を念頭にした大幅増を5年以内に達成するよう提言している。
予算が増えれば、新しい分野であればなおさら、関連業者にはビジネスチャンスと映り、受注拡大に向けた働きかけが強まるのも不思議はない。厳しさを増す安全保障環境の下で、着実な防衛力整備が必要だとしても、国民の幅広い理解と納得を得るには、適切な執行が前提であることを忘れてはならない。
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