(社説)建設統計不正 事態の深刻さ 直視せよ

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 建設工事の受注統計で、不正な処理による過大な計上が毎年兆円の単位にのぼっていた。国の基幹的な統計で大きな誤りが長年続いていた事態は深刻だ。統計が粗末に扱われるなら、まともな政策立案はできない。政府は、最優先の課題の一つとして立て直しを急ぐ必要がある。

 不正は昨年12月に朝日新聞の報道で明らかになり、国土交通省の専門家会議が先週、数値上の影響を分析した報告書をまとめた。誤った処理による二重計上の結果、受注額の値が20年度で3・6兆円(4・8%)過大になっていたという。二重計上が始まった13年度から19年度までは、実際とのずれがさらに大きそうだとの見方も示された。

 この統計は、統計法で「特に重要」あるいは「広く利用される」などと位置づけられる基幹統計の一つだ。不正は、公的統計全体への信頼を傷つけたと言わざるをえない。統計は、政策の立案・実施に加え、民間での意思決定や研究に幅広く使われる公共の基盤である。発覚の過程で隠蔽(いんぺい)まがいの対応までしていた国交省の責任は重大だ。

 今回の不正では、元になる調査票の書き換えなどがあったため、統計の修復は推計に頼らざるをえない。報告書はその手法も示しており、国交省は作業を急ぐ必要がある。

 あわせて、統計作成の体制について、抜本的な改善に乗りだすことが不可欠だ。すでに、人手の少なさや担当者の専門知識の不足、業務全体を理解する調整役の不在、責任回避に陥りやすい組織の体質などが指摘されている。国交省は再発防止に全力を尽くさなければならない。

 政府全体でも、統計の不正が繰り返されることへの反省と、対策のてこ入れが求められる。

 18年末に厚生労働省の統計で不正が見つかった後、政府は主な統計の一斉点検と統計業務の改革を進めた。しかし、国交省の不正は見落とされた。

 当時も再発防止策として、専門性と責任感を備えた人材の育成・配置や、誤りが見つかった時の対応ルールの整備などが打ち出されていた。国交省の件にも通じるものばかりで、実効性を高める工夫が必要だ。

 今回の不正を受け、統計行政の中心を担う総務省は1月に、基幹統計の集計プロセスを各省庁に点検させると発表した。しかし、4カ月たった今も点検項目の方向性を示しただけで、点検開始の時期すら定かでない。新たな改善策をいつまでにまとめるかも、あいまいだ。

 こんなことで、再発防止ができるのか。何度スローガンを掲げても実行が伴わなければ、信頼は取り戻せない。政府はそのことを肝に銘じてほしい。