(社説)自民と国民民主 連立か否か 態度明確に

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 政権与党が自前の候補を立てず、野党候補を支援する。そうなったら、何を基準に投票すればいいのか、有権者が戸惑うのは間違いない。連立を組むのか、閣外協力を求めるのか、態度を明確にしないまま選挙戦に臨むなら、不誠実きわまる。

 この夏の参院選は、岸田政権への中間評価であり、その後しばらくの政治の土台を決める節目となる。与党として、すべての選挙区に選択肢を用意してしかるべきところ、自民党執行部が1人区の山形で擁立を見送り、国民民主党の現職を推薦する方向で検討に入ったという。

 自民党が参院選の選挙区で、他党の候補を推すことになれば極めて異例だ。社会党新党さきがけと3党連立を組んでいた1995年の大分選挙区に候補を立てず、社会党の現職に協力した例はある。同党出身の村山首相のおひざ元で、自社連携の象徴として3選を果たした。

 しかし、当時の社会党は、政策遂行の責任をともに負う与党だった。今も基本的に野党の立場を標榜(ひょうぼう)する国民民主党と同列にみるわけにはいかない。

 自民党は山形で過去2回、野党候補に連敗しており、候補者選びが難航していた。一方で、野党ながら政府予算に異例の賛成をした国民民主党とは、ガソリン高対策やヤングケアラー支援など、政策協議を通じて関係を深めてきた。

 選挙後のさらなる連携強化をにらみ、渡りに船なのだろうが、執行部の思惑で有権者や地方組織を置き去りにするようなことは、あってはならない。

 自民、公明両党は衆参両院で政権を安定的に運営できる多数を占めている。にもかかわらず、さらに国民民主党を取り込もうというのであれば、選挙後の政権の枠組みや共有する政策目標を、岸田首相には明確に示してもらいたい。

 旗幟(きし)を鮮明にすべきなのは、国民民主党も同様である。

 玉木雄一郎代表は、政策実現を最優先に是々非々で対応しているという。だが、当初予算への賛成は政権そのものを信任したに等しい。しかも、賛成の理由とした、ガソリン税を一時的に引き下げるトリガー条項の発動はいまだ実現していない。国会審議の前に、半ば恒常的に政策をすり合わせる関係は、もはや与党同士と言われても仕方あるまい。

 一方、選挙協力をめぐって日本維新の会と合意した文書には、維新と距離を置く支持団体の連合や党内の反発で白紙になったとはいえ、ともに政権交代をめざすことが盛り込まれた。与党か野党か、どの党と手を組むのか、徹底した党内論議で立ち位置を定めることが先決だ。