(社説)北朝鮮と感染 国際支援受け人命救え

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 どんな政治体制下であれ、人命の軽視は許されない。国際社会は積極的な医療支援に乗りだし、北朝鮮はそれを速やかに受け入れるべきだ。

 北朝鮮で新型コロナウイルスによるとみられる熱病が広がっている。当局の発表では連日20万人以上が発熱し、累計で人口の1割に迫る。死者は60人を超えたとされるが、実際の規模は不明だ。

 北朝鮮は早くから厳しい水際対策をとり、これまで感染例を発表してこなかった。だが4月末から「爆発的に拡散」したと国営メディアが伝えている。

 4月25日には平壌で、史上最大規模とされる軍事パレードがあり、これらが拡大に拍車をかけたとの見方も出ている。

 金正恩(キムジョンウン)総書記は「建国以来の大動乱」だとして都市封鎖などを指示した。だが、いくら規制を強めても限界がある。

 ワクチンをめぐり、北朝鮮は昨年、国際的な枠組みからの受け取りを拒んだ。もとより医療体制は脆弱(ぜいじゃく)で、医薬品も極端に不足していると言われてきた。中国から最近、大量の医薬品支援を受けたとされるが、根本的な解決はほど遠いだろう。

 安全保障のためだとして核・ミサイル開発に莫大(ばくだい)な資金をつぎ込み、その結果、国連安保理決議にもとづく厳しい経済制裁を受けている。社会インフラの整備を後回しにし、いびつな国家運営を続けてきたツケが回ってきたと言える。

 切迫した状況にもかかわらず、北朝鮮は信じがたい動きを見せている。バイデン米大統領が今週末から韓国、日本を訪問するのに合わせ、核・ミサイル実験の暴挙に出る可能性があるというのだ。

 これ以上、自らを孤立させる愚行を重ねてはならない。北朝鮮がいまなすべきは、国際社会からの支援を受け入れて、一人でも多くの人命を救うことだ。現況のデータを世界保健機関などに提供し、効果的な支援を仰ぐ必要がある。

 発足したばかりの韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は医療支援の意向を示しているが、北朝鮮側は明確な意思表示をしていないという。

 金総書記は「人民大衆第一主義」を掲げ、一般市民の生活向上を目指してきた。真にそうだというのなら、外部からの助けを拒む理由はないだろう。

 中国、韓国のみならず、近隣を含む国際社会は人道的な支援を惜しんではならない。

 ワクチン未接種国の北朝鮮で新たな変異株が生まれる可能性も懸念される。国際的な感染症対策の側面から、北朝鮮を粘り強く説得する必要がある。日本としても、隣国の感染禍を放置するわけにはいかない。