(社説)学生の経済支援 必要な人に届く制度に

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 岸田首相が議長を務める政府の「教育未来創造会議」が先ごろ、第1次の提言をまとめた。柱のひとつが学生に対する経済支援策の強化だ。

 お金がないという理由で大学や専門学校への進学を断念する人を減らそうという考えに、異を唱える人はいないだろう。一方で、既に実施されている施策がねらい通りの効果を上げているのか、疑問が浮かぶデータもある。原因を探り、必要な支援を、必要な人に確実に届ける態勢を築くことが求められる。

 低所得層を対象とする現在の高等教育の修学支援制度は、森友・加計問題で揺れた安倍政権が17年衆院選の目玉公約として急きょ打ち出し、20年度から始まった。返済不要の給付型奨学金の支給と、授業料や入学金の減免の二本柱で、財政再建にあてるはずだった消費増税分を財源とした。効果は当然あり、住民税非課税世帯の進学率は40%から54%に上昇した。

 しかし対象にならなかった世帯では厳しい状況が続く。そこで創造会議は、中間所得層のうち、子どもが多い家庭や理工・農学系学部の学生らにも支援を広げるよう提言。また、大学院の授業料を国が肩代わりし、修了後の所得に応じて返済するなどの「出世払い」制度の創設・充実にも言及した。

 気になるのは、現行制度の利用が想定を大きく下回っていることだ。初年度は50万人を見込んで4881億円を用意したが、実際に申請したのは27万人で、予算の4割以上の2092億円が国庫に戻された。21年度の利用者も、若干増えたものの32万人にとどまった。

 関係者が指摘するのが周知不足だ。制度の細部が次々と変わり、多忙な教員が生徒に正確な情報を提供できない。このため「奨学金は全て、将来返さなければならない」との誤解や、教育費は親が出すべきだという考えが根強く残っているという。

 支援の対象や条件がさらに複雑になれば、情報ギャップも拡大すると懸念する声は多い。日本学生支援機構は高校や大学にアドバイザーを派遣しているが、21年度の実績はオンライン方式を含めても700件足らずだった。まずはこうした仕組みの普及に注力してはどうか。

 提言を受けた制度設計や財源の確保はこれからだ。詳細はともかく、少なくとも考えられる案を示して参院選に臨むのが、責任ある政府・与党の姿勢だ。

 ただ予算をつければいいという話でないことは、この2年間の実績が示している。中学の段階から本人や保護者が仕組みを十分理解して進路を検討できるようにするなど、生きた政策にすることが大切だ。