(Media Times)有名人の自死巡る報道、問題は フジテレビに批判、厚労省も注意喚起=訂正・おわびあり

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 自殺とみられる芸能人の死去を伝える報道に対し、SNSで批判の書き込みが相次いだ。世界保健機関(WHO)や厚生労働省は自殺報道について慎重な扱いを求め、各報道機関も配慮を重ねてきた。なにが問題となったのか。

 人気お笑いトリオのメンバーの死去が報じられたのは、5月11日朝だった。

 フジテレビは在京のテレビ局で最も早く、情報番組「めざましテレビ」内で「自殺を図ったとみられる」と報じ、その手段が伝わる発見時の状況についても説明した。その後の「めざまし8」では、自宅マンション前から中継リポートも放送した。

 一方でWHOは報道機関向けのガイドラインで、報道後に自殺が増加するおそれがあるとして、「手段について明確に表現しない」「報道を過度に繰り返さない」などと明記している。

 番組内でコメンテーターの教育評論家尾木直樹さんは、ガイドラインで場所などを報じないよう求められていることを紹介したうえで「若者や子どもたちに(自殺は)楽になれることではない、生き抜こうと呼びかけたい」と語った。

 午前11時半すぎのニュースでは、状況説明が「意識を失っているところを発見された」と変わった。

 フジテレビは取材に「WHOのガイドラインに留意しつつ、報道機関として事実を報じ、国民に伝える責務に鑑み、報道に当たっている」と回答。初期段階では「客観的事実を正確に報じるように」しており、自宅前からの中継は「取材を尽くし、いち早く情報を反映させるため」と説明する一方、「表現内容は時間の経過とともに配慮し、変えていくことがある」と答えた。

 金光修社長は27日の定例会見で「いただいた意見や注意喚起を受け止め、最大限配慮していきたい」と述べた。(平賀拓史)

 ■配慮のあり方、海外でも議論

 これまでもWHOのガイドラインを逸脱する報道が問題視されたことがあり、各報道機関は配慮を重ねてきた。今回も朝日新聞を含む全国5紙は記事中で具体的な手段は書かず、テレビ各局含めて報道の際、心の悩みに関する相談ダイヤルの連絡先を紹介した。

 しかし、今回は当初のフジテレビの放送で手段が伝わる内容が含まれており、自宅前からの中継についてもツイッターで「そこまでする必要はあるのか」といった批判が相次いだ。

 厚労省も11日、WHOのガイドラインに沿った報道を求める注意喚起の文書を2度にわたって報道機関に出した。とくに2度目は、手段についての報道や自宅前からの中継といった具体的な報道を問題視した。

 毎日放送でプロデューサーを務めた影山貴彦・同志社女子大教授(メディアエンターテインメント論)は「テレビの現場は毎分の視聴率を意識せざるをえないが、報道の影響についての想像力が不可欠。メディアの責任を果たすよう各局が話し合い、業界として自主的にガイドラインを定めるべきだ」と指摘する。

 海外でも報道のあり方は議論になっており、高橋祥友・元筑波大教授(精神科医)によると、▽手段や場所を報じない▽新聞の1面やテレビのトップニュースなど目立つ扱いを避ける、といった内容は、米英など多くの国で報道向けのガイドラインに取り入れられているという。

 社会問題となっていた1980年代後半のオーストリアでは、記者や編集者も加わってガイドラインを作成し、センセーショナルな報道を控えるようになった結果、自殺者数が大きく減少したとの結果もあるという。

 一方、米国では20年以上前からガイドラインが存在するものの、「個々の事例に応じて各新聞社やテレビ局が独自に判断する場合が多い」と話す。

 日本では民放各社が加盟する日本民間放送連盟民放連)が、加盟社が留意すべき「放送基準」を設け、人命尊重や「心中・自殺は古典または芸術作品であっても取り扱いを慎重にする」などと定めている。手段や場所の報道を避けるといった具体的な内容には言及しておらず、自殺報道に特化したガイドラインは策定していないという。

 ただ、基準は数年ごとに改定しており、現在進めている次回の見直しでは自殺を取り上げる際の配慮も検討課題にしているという。

 全国の新聞社や通信社が加盟する日本新聞協会でも自殺に関する報道にガイドラインはなく、各社がそれぞれ指針をつくるなどして対応している。

 高橋教授は「ガイドラインを参考にしつつも、独立性を保つためにメディア側が自ら報道内容を検証し、改善し続けていく姿勢を示す必要がある」と指摘する。(江戸川夏樹、武田啓亮、伊木緑

 ■WHOのガイドラインが報道機関に求める主な内容

・どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること

・有名人の自殺を報道する際には、とくに注意すること

・自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと

・手段について明確に表現しないこと

・発生した現場や場所の詳細を伝えないこと

・センセーショナルな見出しを使わないこと

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 Media Times(メディアタイムズ)

 <訂正して、おわびします>

 ▼5月28日付社会・総合面「メディアタイムズ 有名人の自死巡る報道 問題は」の記事で、「筑波大の高橋祥友教授」とあるのは、「高橋祥友・元筑波大教授」の誤りでした。確認が不十分でした。

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