(社説)北電と泊原発 自ら招いた差し止め

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 自らの原発の安全性をしっかり説明できない者に、原発を動かすことを認めるわけにはいかない――。だれもが納得できる真っ当な判断である。

 北海道電力が再稼働をめざす泊(とまり)原発1~3号機について、札幌地裁はおととい、運転を認めない判決を言い渡した。

 地裁は、北電が提出した証拠では、敷地を取り巻く防潮堤の地盤が液状化したり沈下したりする可能性を否定できず、津波に対する安全性の基準を満たしていないと結論づけた。活断層の有無なども争点だったが、それらについて判断するまでもなく、周辺住民らに危険が及ぶことが推定されるとした。

 津波対策をめぐる北電の主張は審理を通じて揺れ動き、信頼性を著しく欠いた。

 想定する津波の高さは何度も変わり、再稼働の是非を審査する国の原子力規制委員会から液状化の可能性を指摘されると、「固い地盤の上に新しい堤防を造る」と言い出した。ところが表明から4年経ったいまも、高さ以外に何も決まっていない。

 訴訟が提起されたのは東日本大震災のあった2011年だ。北電側の立証がいつ終わるとも見通せぬなか、延々と裁判を続けるわけにはいかないとして、これまでに出された証拠で判決に踏み切った地裁の対応は、妥当と言うべきだろう。

 多くのデータを持つ事業者側が真摯(しんし)な姿勢で臨まねば、適正迅速な裁判は実現しない。自らの都合で遅延させることは許されないと肝に銘じるべきだ。

 北電の無責任と迷走を批判するのは裁判所だけではない。

 規制委もまた、13年夏の再稼働の申請以降、説明が二転三転し、審査の場に適切な資料を提出しない北電をたびたび注意。更田豊志(ふけたとよし)委員長はこの春、「地震や津波、火山について専門的な議論ができる人材が欠けていると指摘しているが、十分な対応がみられず数年が経った」と改めて苦言を呈した。

 規制委が厳格・慎重すぎるとの指摘が一部にあるが、筋違いも甚だしい。最高裁はかつて別の原発訴訟で「原子力災害が万が一にも起こらないようにするため」と審査の意義を説いた。政府を含め、関係者は福島の事故の教訓をいま一度胸に置き、今回の判決を読んでほしい。

 北電はただちに控訴する意向を明らかにした。だが、安全を何よりも優先し、広く国民に説明責任を果たすことが求められる原子力事業者として、この10年余の自らのふるまいを反省するのが先だ。あわせて、太陽光や風力など再エネ発電の適地が多い北海道で、この先どこに経営資源を投じるか、再考の機会とするよう求める。