(社説)「桜」前夜祭 今国会で説明欠かせぬ

[PR]

 後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭について、安倍元首相の過去の説明に反する事実がまたも明らかになった。費用の補填(ほてん)を否定した118回に及ぶ「虚偽」答弁の上塗りといえ、到底看過できない。安倍氏は今国会で、数々の疑問に必ず答えねばならない。

 新たに判明したのは、サントリーホールディングス(HD)による酒類の無償提供である。16年に始まり、17~19年の3年間は、ビールやワイン、ウイスキーなど計382本、各年15万円相当が持ち込まれたという。

 前夜祭の会費は1人5千円で、当初から「安すぎる」と疑問視されていた。安倍氏は「参加者の大多数が宿泊者である事情を踏まえ、ホテル側が判断した」「価格以上のサービスは行われていない」と、5千円で賄えたと強弁してきたが、事実関係を詰めないまま、根拠のない説明を繰り返していたのだから、あきれるほかない。

 安倍氏の秘書は、費用の補填が公職選挙法の禁じる寄付にあたる恐れがあるので、金額を抑えるために酒を持ち込んだと、東京地検特捜部の調べに供述していた。秘書らが当初から違法性を認識していたことは、すでに明らかになった訴訟記録からもうかがえる。自分は知らなかったで済む問題ではない。

 政治資金規正法は、企業が寄付できる対象を、政党か政党が指定する政治資金団体に限っている。政治家個人の後援会に対する酒類提供は、違法献金の可能性がある。サントリーHDは「自社製品を知ってもらう良い機会と考えた」というが、新浪剛史社長は、安倍政権下の14年から政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めている。政権との癒着を疑われかねない振る舞いであり、安倍氏側だけでなく、サントリーHD側も説明を尽くさねばならない。

 安倍氏は首相を退いて以降も、自民党最大派閥の長として、強い影響力を持つ。最近は、安全保障や経済財政政策をめぐって、持論を言い放つ場面が目立つが、政権時代の「負の遺産」へのけじめを忘れてもらっては困る。

 安倍氏が進んで説明に応じないというのであれば、1年近くにわたり「虚偽」答弁で欺かれた国会こそが、その実現に動かねばならない。与野党の立場を超えて、行政監視機能の回復に踏み出すべき時だ。

 自民党は今週、党運営の指針にあたる「ガバナンスコード」を定めた。その中には、「疑念を持たれた議員は、国民に対して丁寧な説明を行う」「本党は、厳正にこれに対処する」とある。岸田首相肝いりの指針の実効性が早速問われる。