(社説)脱炭素の国債 償還財源も同時検討を

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 政府が、脱炭素社会への移行を目的に掲げた新しい国債の検討を始めた。温暖化防止への投資を急ぐことは否定しないが、借金だけが積み上がるようでは困る。発行と同時に、将来の償還財源をどう確保するのかも明確にするよう求めたい。

 新しい国債は「GX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債」の呼び名で、7日にも閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案に盛り込まれた。

 脱炭素には、送電網や電気自動車の充電設備などのインフラづくりが必要になる。水素を活用した製鉄など新しい技術開発も求められる。すぐには採算が見込めないものも多いなかで、政府が長期的に支援を続ける姿勢を示し、民間の投資の「呼び水」にするという。

 今後10年間で計20兆円規模の支援を行う方針だが、財源が確保できていない。そこで、脱炭素投資に使い道を限った国債を先に発行し、その後増税などで償還する構想が浮上した。今夏にも「GX実行会議」を設け、詳細を詰めるという。

 財源と使途を明らかにした上で通常より短い期間で償還する国債は、「つなぎ国債」と言われる。これまでも東日本大震災の復興や年金の国庫負担率を引き上げる経費などをまかなうために発行されてきた。

 日本は2030年度の温室効果ガス排出を13年度に比べ46%減らす目標を掲げる。少しでも早く対策を本格化しなければならず、つなぎ国債を活用することは理解できる。

 心配なのは、歳出だけが拡大し、償還財源の決定が政治的に難航する事態である。将来世代に温暖化ガスを先送りしない代わりに、巨額の借金を押しつけるのでは、問題のすり替えと言わざるをえない。

 脱炭素への政府の支援は、電力、自動車、鉄鋼、化学、住宅など幅広い産業に及ぶことになるだろう。財源は、温暖化ガスを排出する量に応じて徴収すべきであり、電力料金への上乗せなど特定の取引に依存するのは望ましくない。

 朝日新聞の社説は、市場機能を生かして効率的に排出削減を進めるために、炭素税の検討を急ぐよう求めてきた。移行債の検討を機に、政府は炭素税に消極的な姿勢を改めるべきだ。

 炭素税を移行債の償還財源にすれば、受益と負担の関係も明確になる。ただ、税収をあてにした「予算ありき」の無駄遣いを招く危うさには注意がいる。

 脱炭素技術の動向やコストを事前に正確に予測することは難しい。投資計画は総額を含め、柔軟に運用する必要があることを忘れてはならない。