(社説)犯罪被害支援 「あす」引き寄せるため

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 社会に衝撃を与えた神戸連続児童殺傷事件から25年になる。小学6年生だった息子の命を奪われた土師(はせ)守さん(66)はメディアの取材に応じ、犯罪被害者への支援を改めて訴えた。

 その土師さんも参加して、今春、新全国犯罪被害者の会(新あすの会)が結成された。

 前身のあすの会は、被害者の権利や国の責務を定めた基本法制定の原動力となり、刑事裁判への参加制度なども実現させて4年前に解散した。だが残された課題は多く、解決に向けて再び手を携えることになった。

 最大のテーマが経済的困窮の改善だ。一定の保険金が支払われる交通事故と違って、殺人や傷害事件の場合、裁判で賠償を命じる判決を得ても、加害者に資力がなければ絵に描いた餅でしかない。

 国の給付金制度はあるが、対象は故意の犯罪行為に限られ、金額も最大で3千万円弱にとどまる。死亡したり傷を負ったりした本人の年齢・収入と、扶養家族の数をもとに算定されるため、子どもが亡くなった場合、最低額の320万円となることも少なくない。救済の名に値する水準とはとても言えない。

 20年度の支給総額は約8億2千万円で、国民1人あたり6円の計算になる。新あすの会の調査によると、仏742円、独592円、米142円となっており、治安情勢の違いなどから単純な比較はできないが、取り組みの弱さは明らかだ。

 同会は北欧諸国を参考に、国が被害者に相応の補償・賠償金を支払ったうえで、それを加害者から回収する制度の創設を求めている。犯罪に巻きこまれるリスクは誰にでもある。被害者の苦境は決してひとごとではないとの認識に立ち、政府・国会は議論を深めてほしい。

 加害者の家族が抱える苦悩や窮状にも目を向けたい。

 3年前に東京・池袋で起きた自動車の暴走事故では、運転者の親族もSNS上などで暴言を浴びた。民間の支援団体「ワールド・オープン・ハート」は08年の発足以来、こうした2千件以上の相談に応じてきた。地域に住みづらくなって引っ越したり、転職や離婚を余儀なくされて自殺を考えたりした人も少なくないという。

 深刻な人権侵害であり、手をこまぬいてはいられない。家族の存在が加害者本人の更生を促し、謝罪や賠償につながることもある。再犯を防ぐ力にもなろう。家族を追い詰めることは、被害者支援の観点からも決してプラスにならない。

 加害者側との対話を望む被害者もいる。各人の思いや事情をくんだきめ細かなサポートが、従来にも増して求められる。