(社説)コロナ司令塔 「徹底検証」欠いたまま

[PR]

 岸田首相が「内閣感染症危機管理庁」の創設を表明した。感染症が流行したとき、この下に厚生労働省をはじめとする関係省庁から職員を集め、首相が直接指揮にあたるという。

 未知の感染症に立ち向かうには、司令塔機能の強化が必要だという問題意識は共有する。縦割りを排し、政治がリーダーシップを発揮して一元的に対応するとの方針にも異論はない。

 ただし、それが適切に機能するためには、まず今回のコロナ下で起きた様々な事象を検証して問題点を洗い出し、教訓を共有することが不可欠だ。

 首相は昨秋の所信表明演説で「これまでの対応を徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのかを検証する」と明言した。ところがそのための有識者会議の設置は先月にずれ込み、5回の会合で終了した。おととい公表された報告書は21ページ。指摘済みの課題を列挙し、首相が同じく昨年から口にしてきた「司令塔組織」の整備を提言するという、まさに予定調和の内容に終わっている。

 医療、経済団体や政府分科会の尾身茂会長などからは意見を聴いたものの、政策決定の責任者である首相や閣僚、実務を担った官僚らは対象外だ。「徹底的な検証」とはおよそ呼べず、参院選を前に帳尻を合わせただけなのは明らかだ。

 報告書も、取り上げられていない課題があることを認め、今後の「多面的」な検証と的確な政策の推進を求めている。その責任は自分たちにあると、政府や国会は肝に銘じてほしい。

 検証の対象には当の岸田政権も含まれる。首相がワクチンの3回目接種の前倒しを繰り返し唱えても事態は進まず、検査態勢の拡充も安倍政権の時から課題であり続けている。官邸と厚労省の間で、どんな意思疎通がなされているのか。第1波から2年が経ってもなぜ改善されないのか。首相はわがこととして危機感をもつべきだ。

 リーダーシップは大切な一方で、薬やワクチンの承認審査など厳格な手続きが必須の分野にまで、政治が介入するのはむろん許されない。また安倍政権下での一斉休校や布マスク配布が示したように、首相や周囲の独断で施策を進めることの危うさも忘れてはなるまい。

 岸田首相は15日の会見で、国立感染症研究所国立国際医療研究センターを統合する考えも示した。新しい姿の詳細は不明だが、専門家組織はあくまでも客観性を重んじ、第三者的な立場から分析・提言できる存在であるのが望ましい。人材育成の観点からも大学や他の研究機関との交流を深め、研究のレベルを高めていくことが重要だ。