(社説)生活保護判決 自民党の責任も重大だ

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 安倍政権下での生活保護費の大幅な減額に、司法から改めてノーが突きつけられた。大臣の裁量権を逸脱または乱用したと断じられた厚生労働省はもちろん、国政選挙の公約に掲げて引き下げを主導した自民党にも重い責任がある。

 自民党が政権に復帰した直後の13年から、政府は生活保護の基準を段階的に引き下げた。減額幅は戦後最大で、「物価下落の反映(デフレ調整)」が初めて理由に加えられた。受給者らが引き下げの取り消しを求めた裁判が全国29の地裁で起きている。

 このうち東京地裁は先週、政策判断の過程や手続きに過誤や欠落があり、引き下げは違法とする判決を言い渡した。判決が出た11地裁のうち引き下げを違法としたのは、大阪、熊本に次いで3例目になる。

 判決は、生活保護行政を担う厚労相に裁量権があることは認めつつ、改定の際は、客観的な統計や専門的知見との整合性の有無が問われるとした。

 生活保護基準は従来、一般の低所得世帯の消費実態との比較で調整していた。判決は、厚労省が加えたデフレ調整について、その必要性や従来基準との関係の十分な説明がなく、専門技術的な見地から検討したともうかがわれないと指摘した。

 デフレ調整の手法でも、物価比較の時点の設定が根拠不明だとし、厚労省が独自に算定した物価指数についても生活保護世帯の消費構造と大きな隔たりがあり、実態を正しく評価していないと判断した。

 いずれも納得できる指摘だ。複数の裁判所で、厚労省の対応が合理性を欠き、違法だと指弾された事実は重い。

 加えて問われるのは、厚労省がなぜそれほどまでの無理を重ねて引き下げを断行したかだ。判決は経緯に言及していないが、自民党が野党だった12年末の衆院選で、生活保護水準の1割カットを公約に掲げたことが背景にあるのは明らかだ。

 当時は「生活保護たたき」の風潮が広がっていた。「自助」に軸足を置いた自民党はその流れに乗り、一部の政治家にはあおるような言動もあった。そして政権復帰後の最初の予算編成で採用されたのが、問題のデフレ調整だ。

 生活保護基準は憲法25条の生存権保障に基づき、就学援助最低賃金など多くの人の生活にもかかわる「公助」の要である。専門的知見を無視した削減ありきの政策は、政治主導のはき違えと言うほかない。

 選挙の時は歓心を買う発言を威勢よく繰り返し、後始末は官僚に押しつける。そんな政治は通らない。

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