(社説)G7首脳会議 秩序維持へ重責自覚を
世界の安全保障の不安が高まり、物価高騰が各国の暮らしにのしかかる。その重苦しさのなかで今年も主要7カ国(G7)首脳会議が開かれた。
ロシアの侵略以降、多国間で対応を先導した外交枠組みは、G7だった。国連安保理をはじめ各種の機構は十分に機能できておらず、国際秩序を守るG7の役割は鮮明になった。
ウクライナ情勢は長引いており、西側諸国には「支援疲れ」の空気も漂う。それだけに今回の会議がうたう「結束と決意」(議長国の会見)は、連帯の維持に必要な引き締めだった。
1975年にできたG7は近年、新興国の台頭により影響力の低下が言われた。それが改めて存在感を増す結果になったのは、「法の支配」という秩序の基盤が揺らいでいるからだ。
国連安保理の常任理事国が侵略を起こした今、国際社会は主権の尊重を軸とする平和原則の下に結集する必要がある。そのために主要先進国が注力すべきは、新興国や途上国などへの幅広い働きかけであろう。
ドイツ首相は「ロシアを非難するのは西側だけで他の国々は見ているだけという、ロシアの筋書きに対抗する」と述べたが、実際はG7主導の国際制裁は今も十分な広がりがない。
今回の会議はインドやインドネシア、南アフリカなどを招いたが、さらなる対話が必要だ。多くの国は、西側か、中ロかの選択はできず、「民主主義と専制主義との闘い」という看板だけでは共感は得にくい。
その意味で今回、気候変動やエネルギー、食料をめぐる国際共益に着目し、各国を支援する姿勢を示したのは適切だった。途上国への食料供給のための拠出金強化などは速やかに実行してこそ価値がある。
先進国が秩序を守るための試練は対外関係だけではなく、足元にもある現実を忘れてはなるまい。各国に広がる自国第一主義やポピュリズムである。
米国のトランプ現象や英国の欧州連合離脱に加え、フランスで今春にあった各選挙でも自国優先を掲げる勢力が躍進した。格差の拡大と社会の分断が生む不満の高まりは、世論を国際協調から遠ざける。
主要7カ国は今後、自らの国内政治の安定を図りつつ、国際共益の向上をめざす取り組みが求められる。最近のコロナワクチンの供給問題が示したように世界の南北格差が見過ごされるようでは、価値観重視の呼びかけも説得力を持ちえない。
自国第一の風潮に決別し、本気で内外の貧困の改善や均衡ある国際開発に取り組む。それが長期的には無法な侵略を許さない秩序形成に資するだろう。
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