(患者を生きる:4357)寿珠ちゃんの病名は:4 難病と判明、前を向けた=訂正・おわびあり

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 東京都のさやかさん(29)と夫の優太さん(34)は2021年6月、慶応大病院を受診してすぐ、主治医の武内俊樹さんから電話を受けた。「なるべく早く、寿珠(すず)ちゃんに入院してほしいんです」

 検査結果が判明し、寿珠ちゃんは今もときどき無呼吸を起こし、危険だと考えられたためだった。

 全ての遺伝情報を調べるゲノム解析の結果はまだ出ていなかったが、武内さんは、摂取した糖をエネルギーとしてうまく利用できない遺伝性の病気ではないかと考えた。結果を待つ余裕はなかった。

 こうした病気の治療に使われる、糖を抑えて脂肪分を多く含んだ特殊なミルクを処方し、飲んでもらうことにした。

 間もなく、糖をうまく利用できない難病「ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症」だとゲノム解析で確認された。無呼吸は、呼吸にかかわる脳組織がエネルギー不足に陥ったためだった。

 さやかさんは健康な子に産んであげられなかったと自分を責めていた。だが、武内さんは結果を説明しながら、「お母さんは悪くありません」と繰り返した。

 そもそも、遺伝性の病気が生じるのは、だれのせいでもない。原因となる遺伝子の異常は、親から子へ受け継がれることが多いが、今回は寿珠ちゃんの生命がやどったとき、「突然変異」と呼ばれる形で新たに生じたものだった。

 寿珠ちゃんは約1カ月入院し、特殊ミルクを飲み続けるうち、徐々に改善した。さやかさん夫妻は、いざというときに備えて、病院で酸素補給や心肺蘇生の訓練を繰り返し受けた。

 「久しぶり」。7月ごろ、さやかさんは妊娠中にやりとりしていた友達にLINEでメッセージを送った。連絡を止めて3カ月余。後ろ向きに硬くなっていた心が、徐々にほどけてきていた。

 ふつうの子より体重は軽く、歩くことはできない。それでも着実に成長していることを実感する。

 夫妻は昨年秋以降、動画アプリTikTok(ティックトック)やユーチューブで寿珠ちゃんの動画配信を始めた。PDHC欠損症について多くの人に知ってもらい、治療の進展につながってほしい。そして、難病があっても幸せだということを伝えたい。そんな思いだ。田村建二

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 「患者を生きる」は、医療サイト「朝日新聞アピタル」(http://www.asahi.com/apital/)でも、ご覧になれます。

 <訂正して、おわびします>

 ▼6月30日付「人生100年」面の「患者を生きる 寿珠ちゃんの病名は<4>」で、「接種した糖」とあるのは「摂取した糖」の誤りでした。