(社説)NATOと日本 「安定」に資する連携を

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 広大なユーラシア大陸の西では、ロシアによるウクライナ侵略が続く。東では、経済力と軍事力を蓄えた中国が、強引な海洋進出や台湾への威嚇などで、既存の国際秩序に挑む。

 こうしたなか、日本が日米同盟に加え、欧州諸国とも安全保障面の連携を深めることには意義がある。ただ、中国に対抗する姿勢ばかりが前面に出れば、かえって緊張を高める結果になりかねない。対話の努力を同時に進めねばならない。

 マドリードで開かれた北大西洋条約機構NATO)の首脳会議に、岸田首相が日本の首相として初めて出席した。「パートナー国」として、韓国、豪州ニュージーランドの首脳らとともに招待された。

 首相は「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と、強い危機感を表明。「欧州とインド太平洋の安全保障は切り離せない」といい、8年前に結んだNATOとのパートナーシップ協力計画の改訂を急ぐ考えを明らかにした。具体的には、サイバーや海洋安全保障分野の協力、互いの演習へのオブザーバー参加の拡充などをあげた。

 中国をにらみ、欧州の東アジアへの関与を確かなものにするため、この10年間、海賊対処の共同訓練などを通じて積み上げてきた関係を、大幅に格上げしようという狙いは明らかだ。

 今回の首脳会議は、NATOにとっても節目である。軍事的中立を続けてきたフィンランドスウェーデンの加盟が決まった。新たに採択した「戦略概念」では、ロシアをパートナーからはずし、「最大かつ直接的な脅威」と位置づけた。中国を初めて取り上げ、欧米の価値観や安全保障に挑んでいると警戒感をあらわにし、ロシアとの協力関係にも強い懸念を示した。

 かつては経済的な利益を重視していた欧州側が、中国への姿勢を転換し、アジアでのパートナーとして改めて日本に目を向けてきたことは、日本側にとって歓迎すべきことだ。ただ、NATOは加盟国の集団防衛を最大の任務とする軍事同盟である。具体的な協力策を定めるにあたっては、日本の安全保障政策の原則から逸脱することのないよう、注意が必要だ。

 日欧連携の基盤には、普遍的な価値の共有がある。一方、アジア太平洋は、歴史、民族、宗教など、多様性に富んだ地域だ。「自由」や「民主主義」といった価値観をふりかざすだけで、糾合できるものではない。いかなる国であれ、大国による不当な介入を受けることはない――。「主権の尊重」を軸とする「法の支配」を共通項に協力を広げ、地域の平和と安定に貢献することが日本の役割だ。