(社説)コロナ医療態勢 「顔見える関係」を築く

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 次のパンデミックに備えるとして、政府のコロナ対策本部が先ごろ「対応の方向性」を公表した。首相肝いりの内閣感染症危機管理庁の創設と並んで、大きな柱になっているのが保健医療体制の再構築だ。

 日本は民間病院が全体の8割を占め、病床の確保や互いの連携・協力を現場の自治体の調整にゆだねるやり方には限界がある。朝日新聞の社説は、国が主導して打開策を探る必要性を指摘してきた。

 示された「方向性」によると、病床の提供などについて、あらかじめ都道府県と医療機関が協定をかわす制度を設け、公立病院特定機能病院には締結を義務づける。協定に従って動くよう勧告・指示する権限を知事に与えることや、違反した特定機能病院の承認を取り消したりすることを検討する。国が医師や看護師の派遣を広域調整する仕組みもつくるという。

 昨夏のコロナ第5波では、入院先が見つからずに自宅で亡くなる感染者が相次いだ。臨時の施設をつくっても、医療従事者の確保が難しい、回復後の療養先が用意できず病床が空かないといった問題も起きた。

 同様の事態を招かぬよう、まず設備や人員を備えた病院に責任をもって対応してもらおうという考えは、理解できる。だが行政がいくら権限をふりかざしても、医療側の理解がなければ何事も円滑には進まない。

 感染症対応に伴う減収を確実に補償するなど、病院が納得できる支援策の充実が急務だ。昨年の感染症法改正の際、保健所の調査を拒む者などに刑事罰を科す考えを打ち出し、医療界を含む各方面から批判を浴びたことを思い出すべきだ。強権的な手法は反発を招きかねない。

 計画を立てて医療機関、保健所、自治体の仕事を事前に定めておくのはもちろん、平時から実践的な訓練を重ねることが大切だ。日ごろ「顔の見える関係」を築いていた地域は、連携してコロナ禍に立ち向かい、成果をあげた。「次」につながる大きな教訓である。

 身近な診療所の活用も忘れてはならない課題だ。病原体の感染力や毒性を勘案しながら、流行時に開業医や訪問診療医が担う役割を明確にして、対策全般の中に位置づける必要がある。

 今回の方針に先立ち、政府の有識者会議は「かかりつけ医」の機能が発揮される制度の整備が重要だと指摘。閣議決定された「骨太の方針」にも、同趣旨のことが盛り込まれた。

 制度化にあたっては、診療所の機能や意義、患者との関係など整理しなければならない課題は多い。国民の視点に立った議論の積み上げが欠かせない。