(フォーラム)ランドセル、どう思う:2 変えられる?

[PR]

 中身の重さや家庭の費用負担などの課題があるランドセル。実は、公教育についての奥深い問題をはらんでいるとの指摘もあります。子どもたちにとって、より良い通学かばんの形とは何でしょうか。読者のみなさんの意見を紹介しながら、改善策を探ります。

 ■子ども優先で/置き勉認めて/文化残したい

 アンケートは、子育て世代の30代、40代からの回答が6割に上りました。結果はhttps://www.asahi.com/opinion/forum/158/で読むことができます。

 ●安価で使いやすいものを まさにラン活の渦中にいます。あの価格ってどうなの?と疑問を抱きつつも、みんなと同じランドセルがいいよなと思い、カタログを眺めています。もっと安価で使いやすいかばんで十分では。(大阪、女性、30代)

 ●発達障害児用はオーダー 現在ラン活中。発達障害児のためオーダーメイドを考えているが、手先が不器用で背負うのも大変な子どもがランドセルを使う必要があるのか?と思う。金額も高い。(岩手、女性、20代)

 ●子ども最優先で 小学生の頃にスーツケースにもなるリュックで通学していましたが、肩こりから解放されて非常に快適でした。子どもが不調にならないことを最優先で選ばせてあげてほしいと思います。(東京、その他、20代)

 ●本人の希望でリュックに 4年生の息子がいます。タブレットを毎日持ち帰るようになり、帰宅と同時に「肩痛い~」と。リュックにしたいか尋ねたところ、そうしたいと即答したので、翌日からリュックで登校しています。本人の意思を尊重し選べるようになると良い。(千葉、女性、40代)

 ●ペンケースとタブレットだけで 時代はペーパーレスなので、ペンケースとタブレットだけ持って通学できるようにすべきだ。子どもたちが身体に負荷をかけることなく通学できる社会にするのが、大人のつとめではないでしょうか。(広島、その他、30代)

 ●ほどほどの価格で統一を 各家庭の経済格差が目に見えるのは子供心にも精神的につらいと思うので、ほどほどの価格のもので統一した方がいいように思う。(千葉、女性、40代)

 ●画一的な教育考え直して みんな一緒という同調圧力社会の入り口の象徴に見える。本当に子どものことを思うなら、ランドセルに始まる横並びや画一的な教育を考え直してほしい。(京都、女性、40代)

 ●いじめが心配? アメリカの小学校に通っていたが、みなキャラクターもののリュックなどで登校していた。日本で完全に自由にすると、見えや世間体、いじめられないかという心配で結局ランドセルを買わざるを得ない気がする。(東京、女性、30代)

 ●時代にあったものを 時代にあったものを使った方がいいと思います。いつまでも伝統に従おうとしたら進化することができないです。(栃木、男性、10代)

 ●通学する姿見て心配に 小学校の近所に住んでいる者です。体格の小さい下級生は、後ろから見るとランドセルが歩いているように見える。さらに、色々な下げ袋も一緒にぶら下げており、車が引っかけそうで危なくて見ていられない。(千葉、男性、80代)

 ■教材にも問題/格差が表面化しない

 ●置き勉許されない とにかく、ランドセルが重すぎる。「教科書を学校に置いて来てもいいように先生にお願いしてみるから」と言っても、子どもたちは「ダメって言われてるから」と答える。教師の命令に従順な子どもたちは、自らを守るすべを知らない。(愛媛、男性、40代)

 ●価格上昇望ましくない ランドセルを販売していたことがあるが、利益率が非常に高かった。そういう意味でもメーカー・小売店ともに「ラン活」に力を入れてきたところはあるのでは。ランドセルは貧富の差が表面化しないためのアイテムだと考えているので、大きな価格の上昇が望ましいとは思わない。(神奈川、男性、30代)

 ●教材に問題ある ランドセルを作っている者です。ランドセルは企業努力もあり、初期の物よりも軽くなっています(1キロ未満の物もある)。余程の壊れ具合でない限り6年間は無償で直してくれます。全てランドセルが悪いとは思ってほしくない。学校側の教材にも問題がある。(東京、その他、20代)

 ●残ってほしい文化 田舎では祖父母が孫に贈るという習慣があるので、世代のつながりとして残ってほしい文化のひとつだと思う。(埼玉、男性、50代)

 ●学校にスペースあるか 「ランドセルもっと自由でいいじゃん。置き勉させてよ」という意見でしたが、そもそも教室に置くスペースがあるのかを考えないといけないと思いました。一学級の人数を減らさないと難しい学校もあるのかなと思いました。(埼玉、男性、20代)

 ■体一つで通えてこそ、真の公教育 「隠れ教育費」共著者・福嶋尚子さん

 「ランドセルありき」の現状は、なぜ変わらないのでしょうか。「隠れ教育費」の共著がある福嶋尚子・千葉工業大准教授(教育学)は、問題の背景に、公教育が本来果たすべき役割が見えると指摘します。

     ◇

 ランドセルは、位置づけとしては公立中学校のかばんや制服のような「学校指定品」ではありません。それなのに、学校ではランドセルありきの指導が行われ、保護者も自然に対応して、高額な費用を負担することが当たり前になっています。

 学校の指定かそうではないかで重要なのは、お金の流れ方です。学校を通すお金と通さないお金があり、私は後者を「隠れ教育費」と呼んでいます。隠れ教育費は「保護者が勝手に買ってくるもの」という位置づけで、学校側の責任があいまいとなり、価格の抑制も利きにくい。

 一方で、ランドセルや似た形状のリュックを自治体が支給するケースもありますが、これにも問題があると思います。負担の主体が家庭から自治体に替わればいいのか、メーカーが公正に選ばれているのか、といった観点からです。自治体がランドセルを学校指定品のようにしてしまうことにも違和感があります。

 学校としては、子どもたちが同じ規格のかばんを持っていれば指導しやすい、という事情はあるようです。より本質的には、学校教育が学校の中で完結しないため、家庭に教材を持ち帰るために必要になるのがランドセルなのだと思います。

 理想を言えば、子どもが体一つで登校し、学校に何もかもがそろった上で先生が授業を展開してくれる、というのが本当の意味での無償性が実現した公教育だと思います。

 でも今は、学校に置き場所がなく、宿題もたくさん出さなくてはいけないので、教材を持って行き、持ち帰ってくる。最近では、タブレット端末を充電する環境が学校になくて家に持ち帰るケースもあります。

 「義務教育は無償」とされながら保護者がたくさんのお金をかけ、それでも子どもたちの権利が満たされていない状況があると感じます。学校教育が本当に責任を果たしていれば、こんな状況にはなっていないはずで、それが象徴的に表れているのがランドセルではないでしょうか。

 ■当事者発・ナイロン製、多様な通学かばんも

 なぜ、小学生の通学かばんは「ランドセル」だけなのか? 機能や価格に疑問を持った保護者の思いから生まれた商品もある。

 その一つ、「NuLAND(ニューランド)」=写真[1]=は、リサイクルポリエステルの素材を使い、「かぶせ」が取れるようなデザインにして、軽く、長く使えるようにした商品だ。開発したのは、小学校3年生の長男を育てる岡本直子さん。長男が小学校に通い始めたばかりのころ、学校から持って帰るランドセルの重さに驚いたことがきっかけだった。

 軽さや環境に着目して素材を探したほか、荷物が偏らないようにするバンドをつけて、体感の重さを軽減できるように工夫。かぶせを取ると重さは750グラムで、リュックのようなデザインになる。状態がよければ、卒業後にも使えるメリットもある。

 岡本さんは「通学かばんは革のランドセル、ということが当たり前ではないはず。自分にあっているもの、気に入ったものを使ってもらいたい。選択肢はたくさんあるよ、ということを、子どもたちにも示してあげたい」と話す。

 各地で定着するかばんもある。

 京都府を中心に使われているのは、ナイロン製でランドセルとリュックの機能を併せ持つ「ランリック」=写真[2]。府内の業者が1968年に開発した。A4サイズの教科書が入る「大型サイズ」が670グラム、さらに容量が大きい「特大サイズ」が760グラム。1万円前後で購入できる。

 茨城県日立市は、重さ550グラムのファスナー式薄型ランドセル=写真[3]、同市提供=を新入生に配る。北海道小樽市ではナップザックとランドセルの特徴を持つ「ナップランド」が普及している。

 ■詰め込まれる教材、もっと「余白」を

 教科書に副教材、タブレット、体操服、水筒、図書館から借りた本――。小学2年生の息子は毎日、ランドセルに収まりきらないほどの荷物を持って、家と学校を往復しています。入学直後から連日、算数と国語などの宿題が出され、それ以外の「家庭学習」も推奨されています。

 教科が増え、教科書も分厚くなったということは、子どもたちが学ばなければならない内容もそれだけ増えているということ。先行き不透明な時代に大人たちが抱えている不安が、子どもに転嫁されているようにも感じます。

 不透明な時代を生き抜くには、自分で考え、切り開いていく力が必要なはず。そのためには、子どもたちの時間のなかに、もっと「余白」が必要なのでは、と感じます。「たくさん詰め込む」のではなく、一見無駄なように見える時間を過ごしていくなかで育っていく力を、もっと大切にできるといいなと思います。(仲村和代)

 ◇松本千聖、田渕紫織、中井なつみが担当しました。

 ◇来週10日は「私の悩み、社会を変える?」を掲載します。

 ◇アンケート「投票の義務化について、あなたの考えをお聞かせください」「命の大切さ、子どもたちにどう学ばせる?」をhttps://www.asahi.com/opinion/forum/で募集しています。

 

連載フォーラム

この連載の一覧を見る