(社説)民主主義の破壊許さぬ
銃弾が打ち砕いたのは民主主義の根幹である。全身の怒りをもって、この凶行を非難する。同時に、亡くなった安倍元首相に対し、心から哀悼の意を表する。
参院選の投開票日の直前に、しかも街頭で遊説中に、現役の有力政治家である安倍氏が撃たれたことはあまりにも衝撃的だ。
選挙は、民主国家の基礎中の基礎である。そこでは思想信条の自由、言論・表現の自由、投票の自由が、厳格に守られなければならない。
その選挙を暴力で破壊する。自由を封殺する。動機が何であれ、戦後日本の民主政治へのゆがんだ挑戦であり、決して許すことはできない。その罪の危険さ、深刻さを直視しなければならない。
政治家は有権者に選ばれ、「全国民の代表」として活動する。任にあらずと見なされれば、選挙で退場させられる。長く政権の座にあった元首相ともなれば、その実績は後世の厳しい吟味を受けるだろう。政治家は皆、いわば「歴史法廷に立つ被告」(中曽根康弘元首相)である。
そうだとしても、凶器により生身の肉体をもって裁かれるいわれはまったくない。
戦前日本の一時期は、5・15事件、2・26事件といった政治的テロが頻発する時代だった。その果ての太平洋戦争の敗北まで、いかに多くの犠牲者が国内外で出たか、改めて銘記しなければならない。
戦後も、政治家や言論機関を狙ったテロがなくなったわけではない。しかし、私たちはそのつど、卑劣な行為への憤りを分かち合い、屈することなく、ひるむことなく、ともかくも自由な社会を守ってきた。その尊い営みを未来に引き継がなければならない。
まずは捜査当局に、事件の背景の徹底究明を求める。有権者は、大きな驚きに耐えつつ、投票日に臨もう。
21世紀に入り、世界各地で民主主義の失調があらわになった。米連邦議会への暴徒乱入はその象徴かと思われたが、今回、日本が直面する危機も深い。
民主主義を何としても立て直す。決して手放さない。その覚悟を一人ひとりが固める時である。
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- 【提案】
テロ・暴力を許さないためにも、選挙にいきましょう。私たちの意見は、暴力ではなく選挙で反映させましょう。7/10参院選に行きましょう。民主主義を守るためにも。